光ネットワークの導入本格化は2025年から–NECが事業動向を説明

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 NECは11月29日、光トランスポート(伝送)事業に関する説明会を開催した。この市場では、2025年からデータセンター領域を中心に導入が本格的に始まるとし、同社は「オール光化」と「オープン化」をキーワードに、製品展開や課題解決などの取り組みを進めているとした。

 まず市場動向について、トランスポートネットワーク統括部長の佐藤壮氏が解説した。英調査会社Omdiaの予測によると、光トランスポート市場の2023~2029年の年間平均成長率は、データセンター領域が約7%、通信事業者などその他の領域が約3%で、データセンター領域を中心にした成長が見込まれているという。国内では、政策によりオール光ネットワークの整備やデータセンター立地の分散化が推進されている。

 さらに、ネットワーク分野では、都市部へのデータセンターの集中、通信インフラ運用人材の減少、生成AIなどの新興テクノロジーへの対応が課題になり、これらへの対応には、地方などへのデータセンターの分散化、ネットワーク運用の自動化や効率化、機器やシステム同士(M2M:Machine to Machine)接続への対応が鍵になり、オール光ネットワークの推進とオープン化が必要になるとした。

 インフラの観点でも、コンピューティングやネットワークのサービスを包括的にオンデマンド型で利用できるようなことが求められてくるとする。現状ではコンピューティング領域で実現されている一方、ネットワーク領域はまだ階層型で、IPネットワークと光ネットワークではシングルベンダーが管理する環境であるなど、ここでもオープン化が欠かせないとしている。

 佐藤氏は、ネットワークのオープン化とオール光化が、ネットワーク構築投資の最適化、多様な調達先が存在することでのサプライチェーンリスクの低減、多様な業種の共創によるイノベーション創出、新規サービス提供の迅速化、M2Mなどのリアルタイムな接続性の実現、高効率化と省電力化――といった価値をもたらすと説明した。

 NECは、2022年9月の記者会見でオール光ネットワークの事業を強化する方針を発表。これまでに、市場展開ではユースケースの開拓や実証、パートナーとの共創活動、小規模なオールフォトニクス(光)ネットワーク(APN)への適用などを進めてきたとする。

 また、オープン化とオール光化の取り組みでは、「Open ROADM MSA」や「Telcom Infra Project」「IOWN Global Forum」「The Optical Internetworking Forum」といった標準化団体やコミュニティーに参画し、相互接続性の実現やマルチベンダーのオープンな市場形成などに向けて活動しているとした。製品領域では、従来のような垂直統合型ではなく、マルチベンダーのハードウェアとNEC製のネットワークOSを組み合わせたホワイトボックス型のトランスポンダ(光電変換・中継装置)を開発し、Telcom Infra Projectによる認定の段階的な取得を進めている。

 なお、オープンなホワイトボックス型の光ネットワーク機器への急速な移行は、通信事業者などのユーザーにとって大きな負担となるため、同社ではまずトランスポンダから進め、ROADM(光信号の構成を変更可能な多重装置)やコントローラーなどにも順次広げていくことで、ユーザーが技術革新や設備のライフサイクルに応じて段階的に移行できるようにしていくという。

 現在の同社の製品では、IOWN Global Forumに対応しオープンな仕様を取り入れた「SpectralWave WXシリーズ」を展開する。今後は、特に上述のホワイトボックス型トランスポンダに加え、2025年からの本格導入が見込まれるデータセンター向けのエッジROADMを拡充する方針。佐藤氏は、製品開発においてホワイトボックス、ディスアグリゲーションのアプローチを採ることでユーザーニーズに応じた柔軟な構成や機能の組み合わせができるとし、小型化や低コスト化、省電力性、単機能性を求められるデータセンター向け製品も対応可能だと説明する。

 上述の人材不足などの課題に対するネットワーク運用の自動化や効率化では、機械学習技術を活用した故障予兆の検知・対応や復旧時間の短縮化に長年取り組んでいるほか、保守・運用の業務フローを「検知」「分析」「決定」「実行」といった形で“ブロック”化し、ベストプラクティスと顧客要件に応じて柔軟に業務フローを構成できるようにしている。各種ソフトウェアもパッケージ化を図り、個別開発などの工数やコストの負担軽減を推進する。

 光ネットワークならではの課題には、光波長パスの設計や設定などができる高度な専門人材の希少性もあるとのこと。ここではNTTとの協業を通じて、光波長パスの設計・設定の自動化に取り組み、熟練技術者で数時間を要した作業を6分程度で完了できるようにしたという。また、光伝送路の状態を可視化する技術をNTTや米デューク大学と開発。光トランシーバーの情報を基に遠隔で一括測定することで、伝送路状態を数分程度で把握できるという。

 光ネットワークのユースケースについても、多様な取り組みをパートナーや関係組織で連携しながら進めているとする。例えば、物理的に離れたデータセンター間の光ネットワーク接続による超低遅延性などの実証をNTTグループと行ったほか、日本オラクルと「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を活用した分散クラウドとAPNの活用で協業している。

 国内最大級のネットワーク技術展示会の「Interop Tokyo」では、2023年のイベントで会場と同社の我孫子事業所をAPNで接続しての多様なデモを披露し、2024年のイベントでは、会場インフラの「ShowNet」のバックボーンで過去最大の1.8Tbpsのサービスを提供した。このほかにも放送業界における広域拠点を接続しての番組制作の実証や、情報通信研究機構とは、北海道と東京を接続して「雪まつり」の8K超高精細映像の配信実験なども行っている。

 佐藤氏は、光ネットワークの本格導入がまずはデータセンター分野で始まるだろうとし、生成AI開発に伴う電力消費の増大を光ネットワークで抑制するソリューションが期待されるという。ユースケースの拡大や顕在化とともに光ネットワークの社会実装が進展すると予想している。

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