「AIが人の代わりに業務を行えば余剰人員が溢れないか」とIIJ鈴木会長に聞いてみた

今回は「「AIが人の代わりに業務を行えば余剰人員が溢れないか」とIIJ鈴木会長に聞いてみた」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、IIJ 代表取締役 会長執行役員 Co-CEOの鈴木幸一氏と、KPMGコンサルティング アソシエイトパートナーの田中誠人氏の「明言」を紹介する。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木氏は、同社が先頃開いた2024年度(2025年度3月期)第3四半期累計(2024年4~12月)決算の発表会見の質疑応答で、同社のAIの取り組みとともに「AIが人の代わりに業務を行うようになれば余剰人員が溢れるのではないか」と聞いた筆者の質問に対して、上記のように答えた。「全くそうは思わない」と語気を強めた第一声が印象的だったので、明言として取り上げた。

 今回発表された決算の概要については図1をご覧いただくとして、ここでは鈴木氏のAIに関する発言に注目したい。

 IIJはAIの本格的な活用に向けて、2024年11月に「AI導入実験室」と名付けた組織を立ち上げ、鈴木氏自らが室長に就任して陣頭指揮を執っている。四半期前の決算会見でそのことを発表した際の同氏の発言については、本サイトでの筆者のもう1つの連載「一言もの申す」の2024年11月14日掲載記事「これからはSIそのものがAIによって代替される–IIJ鈴木会長が予見」をご覧いただきたい。

 当時は記事のタイトルにもあるように、AIによるシステムインテグレーション(SI)の代替に言及していたが、今回は違う領域へのAI適用について次のように述べた。

 「IIJをこれから中長期で成長させていく上でAIをどのように活用していけば効果的か。そう考えていたところ、これまでの成長に伴ってバックオフィス業務の部門が拡大していることに気づいた。それはこれまで当然のこととして捉えてきたが、AIをうまく適用していけばバックオフィス業務をかなり効率化できるのではないか。当社は今後も中長期で成長が見込めるので、その一方でバックオフィスを効率化すれば、より強固な経営基盤を築くことができる。AI導入実験室長として、バックオフィス業務にAIを適確に使っていけるようにしていきたい。これは人を減らすためではなく、AIによって抜本的な業務改革を進め、企業として成長していくことが目的だ。2025年度(2026年3月期)には具体的な方向性とともに、成果も挙げて発表できるようにしたい」

 決算発表の会見ではあったが、質疑応答に入る前に、鈴木氏が自ら説明した格好だ。この発言を受けて、筆者は質疑応答で「バックオフィス業務にAIを適用するのは人を減らすためではないとのことだが、実際には相応の余剰人員が出るのではないか。しかも多くの企業が同様のことを考えていることから、大きな社会問題になるのではないか。労働人口減少の解決策になるとも言われるが、余剰人員が溢れるスピードの方が速いのではないかとの見方もある。鈴木会長の見解を伺いたい」と聞いた。すると、同氏は次のように答えた。

 「余剰人員が出るとは全く思わない。新たな技術によって業務の効率化が進むとともに、そうした新たな時代に向けて人も成長する。日本の高度経済成長の時代がまさしくそれを証明している。当時、私は工場で働いていたことがあるが、かつては製品の組み立てラインに工員がびっしり並んでいたが、数年のうちにどんどん減っていった。だからと言って、余剰人員が溢れたことはない。経済成長に伴って人も成長する。むしろ、その成長をAIがサポートするようになるだろう」

 ただ、これまでの工業化とAIは、人に与える影響が根本的に違うのではないか。鈴木氏の見解を聞いて、改めてこの問題についてしっかりと追いかけていきたいと思った次第である。

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