NTTデータ、VMwareを代替する製品とサービスを発表–KVMを中心に7月から提供へ

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 NTTデータは3月12日、仮想化基盤ソフトウェアの中核にオープンソースの「Kernel-based Virtual Machine」(KVM)を位置付け、7月からKVM環境の構築や運用管理を行うツール製品「Prossione Virtualization Manager」とサービスを提供すると発表した。中長期的にVMware環境からの移行を見据えている国内顧客に対応するという。

 同日の説明会に登壇した取締役常務執行役員 テクノロジーコンサルティング&ソリューション分野担当の冨安寛氏は、「当社は官公庁や金融機関をはじめ日本人の手によるシステムの開発や構築、運用に取り組んできた。現在は『ソブリン』(主権)の確保が重要であり、海外(のITサービスなど)を敵視するわけではないが、真には日本人の手で提供していくことが大切」と表明した。

 今回の提供の背景には、BroadcomによるVMwareの買収で、仮想化基盤「VMware vSphere」をはじめとする製品・サービスとそれらのライセンス体系が大きく変更されたことがある。旧来の製品は主に「VMware Cloud Foundation」へ統合され、ライセンスも包括的なものになったが、これまで製品の一部を利用していた顧客には実質的なコストアップになり、より安価なソリューションへの移行を検討する企業や組織が増えている。

 仮想化基盤の製品は長く運用されるだけに、BroadcomによるVMware買収といった突発的な変化にユーザーが今後左右されないよう、ユーザー側が主体的に状況変化へ対応できるようになるという意味で「ソブリン」が重要になるという。

 そこで同社は、今回仮想化基盤の中核にKVMを選択。冨安氏は、同社では2004年からオープンソースソフトウェア(OSS)の活用に取り組み、研究開発やシステム構築、運用、サポートなど広く推進する体制と実績を確立しているとも強調。「これまでもKVMを利用したことはあるが、改めて使いこなすための研究開発に取り組んだ」という。同社内の研究開発環境で1万台以上の仮想サーバーをKVMベースで運用しているほか、現在開発中の金融機関向け「統合バンキングクラウド」などの大規模システム環境でもKVMを採用しているとする。

 冨安氏は、特にオンプレミス環境の仮想化基盤の90%以上でVMware製品が使われてきたとした。VMware側が今後3年ほどはソフトランディングの対応を表明していることから、すぐに移行する顧客が全体の4分の1ほどにとどまる一方、それ以外の4分の3の顧客も3年後をめどに自社のシステム更改などに応じて仮想化基盤を変更する可能性があるとの見方を示した。

 7月から提供するProssione Virtualization Managerは、KVM環境の構築、展開、運用、管理の機能を搭載し、同社が自社開発した。製品の特徴として、NTTデータグループ 技術革新統括本部 プリンシパル・エンジニアリングマネージャの濱野賢一朗氏は、(1)ホストサーバーと仮想サーバーの一元管理、(2)ライブマイグレーションの対応、(3)ウェブベースのグラフィカルユーザーインターフェースによるシンプルな操作性、(4)KVM環境での高可用性構成に標準機能で対応、(5)定期的・長期的なソフトウェアアップデートの提供――を挙げた。

 Prossione Virtualization Managerのロードマップでは、7月の最初のリリースをバージョン1.0とし、10月リリースのバージョン1.1で仮想マシンの構成やストレージ、ネットワークの管理機能、2026年3月リリースのバージョン1.2で仮想マシンの可用性向上や仮想マシンのデータ移行などの機能を追加する予定だという。濱野氏は、「話題となっているベンダーの管理ツール(=VMwareの『vCenter』)と全く同じではないが、バージョン1.2までには顧客から求められている機能の75%程度をカバーできるのではないか」と述べる。

 同社は、Prossione Virtualization Managerおよびナレッジドキュメント、製品サポートをサブスクリプションで提供。オプションでシステム構築とトレーニングもラインアップする。提供価格は個別見積もりとし、現時点では未定。今後顧客やパートナーとの調整を踏まえて7月の提供開始時に改めて発表するとした。濱野氏は、「入口段階としては導入しやすいリーズナブルな設定を目指すが、顧客の使い方によって変わってくるだろう」と話している。

 想定する提供先は、まず金融などの大企業や大規模システムを展開する事業者などが中心だが、濱野氏は「当社グループを含めると中小の顧客やシステムも非常に多くある。物理サーバー数台といった規模の環境でもVMwareからの移行先に悩む声が寄せられており、今後はこうした顧客やシステムもこのソリューションで対応していけるのではないか」と話した。

 仮想化基盤のハイパーバイザーソフトウェアは、普及初期に当たる2000年代に、VMwareなどのプロプライエタリーな製品やKVMや「Xen」といったOSSが台頭。2020年代までにオンプレミス環境では実質的にVMware、パブリッククラウド基盤や新興のシステムなどではOSSも採用されるという状況に落ち着いた。昨今では、コンテナーやサーバーレスなどの新しいアーキテクチャーの利用も増え始めている。

 KVMについて濱野氏は、「過去の乱立期を経て現在もコミュニティーでの開発が続けられており、ハイパースケーラー(世界的な大手クラウド事業者)も広く採用しているので、当面は有力な選択肢として使われ続けるだろう。コンテナーや、特にサーバーレスのエンタープライズシステムへの適用はまだ試行段階にあると見ているが、顧客からの相談は増えている。当社として製品化などは未定だが、現在は提供に向けた技術的なケイパビリティーの確保を推進しているところだ」と説明している。

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