セールスフォースはAIエージェントでサービス企業に進化する–最高製品責任者に聞く

今回は「セールスフォースはAIエージェントでサービス企業に進化する–最高製品責任者に聞く」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Salesforceが米国時間3月5~6日にサンフランシスコで開催した開発者向けイベント「Trailblazer DX 2025」(TDX)は、AIエージェント一色となった。「AIは次の主戦場であるだけでなくSalesforce自身も変えるものになる」と同社 プレジデント 兼 最高製品責任者(CPO)のDavid Schmaier氏が記者とのラウンドテーブルで話した。

 同社は、2024年9月の年次イベント「Dreamforce」でAIエージェントプラットフォームの「Agentforce」を発表して以来、AIエージェントを強力にプッシュしている。今回のTDXで最新版の「Agentforce 2dx」やマーケットプレイス「AgentExchange」などを発表したが、実際に開発者の関心は高まっているのだろうか。

 Schmaier氏は、「ダボス会議(世界経済フォーラム会議)で、Marc(共同創業者兼最高経営責任者のMarc Benioff氏)が集まった経営者に『あなた方は人間だけの労働力をマネジメントする最後のCEO(最高経営責任者)になる』と話した。実際ダボスにいたCEOは、誰もがどうやって自社の事業にAIを適用するかを考えていた」と述べる。その一方で、「Salesforceを運用している管理者や開発者にまでは、(AIを適用するという)その姿勢が浸透していないとしてもおかしくない」と認める。AIはまだまだ最先端の技術であり、時間がかかると見る。

 だが、「25年前に車を呼べるモバイルアプリが登場し、『タクシーを使わずに移動できるようになる』と言っても、誰も信じなかった。現在のサンフランシスコには、無人タクシー(Googleの自動運転タクシーのWaymo)も走っている。現在ではUberがない日常が不便と感じるようになった。同じことが運輸や移動以外のあらゆる業界で起こる」とSchmaier氏。

 実際にAgentforceやデータプラットフォームの「Data Cloud」は、同社の歴史上最も急速に成長している製品だという。Schmaier氏は、「Disney、Accentuate、Indeedなど多数の企業がAgentforceを利用している」と話し、直近の四半期で5200件のAgentforceの契約を獲得したという。だが、同社の顧客は20万社近くあり、Schmaier氏は「半分に浸透するまであと数年が必要だろう」と見る。

 大きな変化を感じるようになるのはいつか? Schmaier氏の予想は5年。「AIエージェント革命の波に乗ることができた企業が勝者になる」(同氏)

 AI、そしてAIエージェントは、さまざまなアプローチでベンダーが進出を図る市場だ。Salesforceは、早期にAgentforceを発表したが、先駆けた以外の強みはどこにあるのか。

 Schmaier氏は、TDXの基調講演でも“三位一体”として紹介されたデータ(Data Cloud)、アプリケーション(Sales Cloudなど各種クラウド)、エージェント(Agentforce)――のこれらが統合されていることは重要な競争優位性と見る。「データ、アプリケーション、エージェント。3つを持つのはわれわれだけだ。他社は1つ、または2つしか持っておらず、ベンダーからの部品をつなぎ合わせたに過ぎない」

 同氏がもう一つ強調したのは、メタデータとセマンティックだ。「データに関するデータであるメタデータと、セマンティックレイヤーにより、情報に文脈が加わる。SalesforceのData Cloudは、メタデータとセマンティックを備えており、これが、われわれのAgentforceが大規模言語モデル(LLM)を上回っている理由だ。LLMにはハルシネーション(虚偽)、バイアス(偏向)、トクシシティー(攻撃性)がある。LLMだけでは、ビジネスには不十分だ」(同氏)

 そして同氏は、LLMをプロセッサーにたとえ、「プロセッサーだけではコンピューターとして使えない。ストレージ、RAM、OS、ディスプレーなどが必要で、われわれはそれを提供する。Salesforceは、25年かけて1つのプラットフォームを構築してきたからこそ可能なのだ」と述べた。

 Salesforceは、このような統合型のアプローチを「DIY AI」と呼ぶ。自分たちで組み合わせるアプローチよりも優位と考えている。「外部の調査からDIY AIのアプローチを取った企業は、Agentforceと比べて期待していた成果が得られないことが分かった。実際のところ、コスト、精度、容易さなどさまざまな点で(DIY AIより)統合アプローチが優れているのだ」(同氏)

 また同氏は、「Docker、Kubernetes、LLMなど技術は常に新しくなり、パッチも発行される。Salesforceには2万人がソフトウェアのプロとして、すぐに対応できる」とも述べた。

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