2021年以降の工場の未来–インダストリー4.0の5つのトレンド
今回は「2021年以降の工場の未来–インダストリー4.0の5つのトレンド」についてご紹介します。
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MathWorksは、1年前に「2020年のIndustry 4.0のトレンド」を追跡調査しています。それ以来、世界は大きく変化し、個人の生活や仕事には大きなねじれが起きる一方で、新型コロナウイルス感染症の影響はこのトレンドを阻害するというよりもむしろ加速させています。そこで、デジタル化がこれまで以上に重要になってきました。このニューノーマル(新しい日常)における製造では、生産システムの自律化や現場調整を廃したシミュレーションによる機器の動作検証などが含まれます。ここでは、今後数年間の5つのトレンドをご紹介します。
1.経済的に成功するAIプロジェクト
人工知能(AI)は、スマートフォンやインテリジェントフィットネストラッカー、スマートアシスタントなどを通じて、既に私たちの生活に浸透しています。ですが、製造業では、AIの統合を真剣に検討し始めたばかりです。しかし、将来の生産ラインでは、状態監視や予知保全、外観検査、製造プロセスの最適化など、AIに大きく依存することになるでしょう。
AI技術は、小ロットで柔軟に商品を製造する完全自動化工場、つまり、「サンプルサイズ1」の生産に至るまでのビジョンを導くと見られています。2021年以降には、技術的に興味深いだけでなく、経済的にも関連性のあるAIを活用したアプリケーションがさらに増えていくでしょう。そして最終的には、標準的なプログラミング方法では不可能だったような、柔軟で強力な装置のソフトウェアがAIによって可能になるでしょう。
2.デジタル世界での装置機能検証
装置のソフトウェアの複雑化と生産設備のモジュール化の進行により、シミュレーションの活用が増えています。コロナ禍での試運転や保守のための海外出張の大幅削減や中止も、この傾向を後押ししています。将来、生産設備の機能テストは、システム全体のモデルを利用したシミュレーションと、バーチャルコミッショニングで実施されることでしょう。
つまり、未来の工場は“二度”作られるのです。最初にバーチャル、次に現物として。デジタル化した生産設備には、現場からの実データが絶え間なく供給され、装置のライフタイムを通じて状態監視を行います。最終的には、現場作業は例外処理だけになるでしょう。
3.工場と事務所のさらなる融合
事務所では、「OPC UA over TSN(OLE for Process Control Unified Architecture over Time-Sensitive Networking)」のような標準化されたプロトコルによってモジュール化された機械が相互接続され、有線接続が5G(第5世代移動体通信)のような無線プロトコルに置き換わるという変革が起こるでしょう。
産業用コントローラー、エッジデバイス、クラウドシステム上で実行されるプログラムは、アプリケーションやダッシュボードとの連携をさらに強化し、最終的には工場と事務所の融合につながるでしょう。ハードウェアシステムがますます強力になることで、生産設備上で複雑なAIアルゴリズムを実行できるようになるでしょう。また、テキストデータの自動処理や、スマートボイスアシスタントで広く定着した自然言語処理により、人間と機械の対話は新たなレベルに進むと見られています。
4.生産・マテハンを自動化するロボットや自律システム
未来の工場での柔軟な生産には、変化し続ける要求に、迅速に適応するための自律型のロボットやハンドリングシステムが必要になります。ロボットのコミッショニングに従来の古典的なプログラミングやティーチング手法は、膨大で急増する多種多様な製品を扱うシステム構築には適しません。将来のマテリアルハンドリング(マテハン)機器は、強化学習やその他のAI技術によって自動的に学習するようになるでしょう。前提条件である膨大な計算能力と膨大なデータ量は、過去数年の間に既に確立されています。
5.「ドメイン知識+」スキルを持ったエンジニアの必要性
2020年は製造業にとってのデジタル化の重要性を示す年でしたが、今後数年で未来の工場に適応できる、もしくは適応できないプレイヤーが明らかになるでしょう。デジタルかつバーチャル世界での課題とビジネスチャンスを活用している企業には、「ドメイン知識+」スキルを持ったエンジニアチームが活躍しています。これは、ドメイン知識と、MathWorksのような企業が提供する技術やツールの専門知識を併せ持つ人材を意味します。従って産業用機器を構築・運用する企業は、これから始まるインダストリー4.0の未来に備えて、これまでとは異なる人材採用を行っていかねばなりません。