不正な株取引を巡ってテクノロジーがぶつかり合う中国
今回は「不正な株取引を巡ってテクノロジーがぶつかり合う中国」についてご紹介します。
関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
中国では株価の不正操作やインサイダー取引が割りとあるようだ。中国メディアなどでもそう報じられている。
近年、中国の証券取引所は不正対策の一つとして、ビッグデータや人工知能(AI)を活用した監視システムを導入している。中国中央電視台(CCTV)は、上海証券取引所が導入したシステムについて、「平均株価の上昇が10%程度であるにもかかわらず、特定銘柄が40%以上も上がる場合で、新規アカウントが熟練した売買の動きを行ったときに異常を感知する仕組みになっている。新規ユーザーがそのようなことをするのは一般的にあり得ず、株取引を熟知した人間がよくやる手法だ」とシステム担当者の話を引用している。また「熟知した人々は複数に分かれて株式を売買しがち。疑いがかかった複数のユーザーを発見したら、グループ化して監視しながら正常か異常かを判断する」と語っている。
システムでフィルターにかけて残った候補だけを人間がチェックするため、作業負担が軽減され、チェックの抜け漏れも減り、不正操作の発見率が向上する。証券監督管理委員会がビッグデータ分析を導入して以降、株価の不正操作やインサイダー取引の発見数は前年比で21%増加したという。
例えば、中国の証券監督管理委員会は2020年1月、株価の不正操作を発見したと発表している。発表によると、首謀者の羅氏をはじめとする31人は、400を超えるアカウントを操作して、「迪貝電気」「海鴎」「世紀天鴻」「道森」などの株を購入。不正に株価をつり上げ、高値で一気に売り抜ける行為を繰り返し、計4億元(執筆当時の為替レートで約68億円)を荒稼ぎした。
これを発見したのが証券取引所に導入されたシステムで、ある期間は平均株価が30%以上も下落していたのに対し、ターゲットとされた迪貝電気の株価は3カ月で40%以上も上昇していた。羅氏らが運用していた400超のアカウント、160万件の取引データを解析したところ、十数台のPCを使って集中操作していたことが明らかになった。金華中級人民法院は、株価の不正操作によって不正所得を得た羅氏ら31人に対し、実刑と罰金の有罪判決を下した。
しかし、過去の取引データを分析するだけでは不正操作であぶり出せないケースもある。2020年になって判明した事件では、犯人の朱氏が自作したトロイの木馬ウイルスを華夏基金などファンド企業のPCに仕掛け、それらファンド企業の取引指示を裏で把握した上で株式を売買していた。犯行は12年に及び、183万元を不正取得した。また、別件として2009年にはトロイの木馬ウイルスを使用して中信証券から企業買収情報を入手し、2万元近い利益を上げている。
それなりにセキュリティ対策はされているはずだが、端末にウイルスが仕掛けられていたことも、ファンドの投資計画に合わせて株が売買されていたことも、12年間という長期に渡って気づかれなかった。前述したようなシステムの検出パターンではなかった点も影響したのだろう。葫芦島中級人民法院は朱氏に対し、実刑3年1カ月、罰金1800万元を言い渡した。中国メディアは今回の判決は刑が軽過ぎると批判している。
トロイの木馬ウイルスを悪用したケースは他にも数多くある。例えば、株取引できるアプリに仕込まれていたり、微信(WeChat)の投資をテーマにしたグループチャットに偽装ファイルが添付されていたり、金融会社のITエンジニアが内部犯行で仕掛けたりなどさまざまだ。
2020年代に入り、2010年代に行われていた株価の不正取引がビッグデータ解析によって徐々に明らかになっている。CCTVをはじめとする中国メディアは、ITを活用した不正対策の一部手法を大々的に取り上げた。不正行為を抑制する効果が期待される一方で、新たな手法で儲けようと発想する人もいるだろう。中国投資家による不正取引は国内だけにとどまらず、日本もその対象になってもおかしくない。こうしたケースを踏まえた上で、日本の投資市場もしっかりと対策すべきだろう。
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