ITフリーランスの仕事や移動中のケガ、病気、障害、死亡などを補償する国の労災保険「特別加入制度」、申し込みが可能に
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2021年9月にスタートしたITフリーランスを対象とした国の労災保険の特別加入制度に関して、申し込む際の窓口となる特別加入団体「ITフリーランス支援機構 全国労災保健センター」が2021年11月に東京労働局長に承認され、ITフリーランスの申し込みが可能になっています。
会社員やパートのための労災保険がITフリーランスも対象に
労災保険とは、仕事や通勤など仕事に伴う移動中に被るケガや病気、障害、死亡に対して、治療費などの療養費、休業する際の休業期間の給付、治療後に障害が残った場合の給付、死亡した場合の遺族への給付などを行うもので、国が管掌しています。
病気やケガの際の医療費を一部負担する社会保険(健康保険)や、国民健康保険などの国民皆保険制度とは別の制度です。
労災保険は、労働者を一人でも雇用する会社には労働者災害補償保険法によって加入が義務付けられており、保険料の全額を会社が負担することになっています。そのため、会社員やアルバイト、パートなど会社に雇用されている立場である労働者は、自動的に労災保険の対象となります。
一方で企業とは雇用関係にない個人事業主や事業主、社長や役員などは労災保険の対象ではありません。
しかし業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人たち、例えば一人で土木や建築などの業務に携わっているいわゆる一人親方、個人タクシーや個人配送業者、農業者のうち一定の条件を満たす特定農作業従事者や指定農作業者などに対しては、以前から一定の条件下で個人でも労災保険への加入が認められていました。
これが労災保険の「特別加入制度」です。
この特別加入制度が国の成長戦略においてフリーランスとして働く人の保護を行う方向性に沿って見直され、範囲が拡大。令和3年(2021年)9月にはITフリーランスも特別加入制度の対象となりました。
参考:ITフリーランスを対象とした国の労災保険「特別加入制度」が今日からスタート。フリーランスでも通勤や仕事によるケガ、病気、障害、死亡など補償
そして申込窓口となる団体の承認が行われ、実際にITフリーランスが申し込み可能になったわけです。
保険料は個人負担。補償の大きさによって保険料が変わる
労災保険の特別加入制度への申し込みは、個人が国に対して直接行うのではなく、特別加入団体を通じて行うことになります。
ITフリーランスが特別加入制度に申し込むために設立された特別加入団体が、一般社団法人ITフリーランス支援機構を母体として設立された前述の「ITフリーランス支援機構 全国労災保健センター」です。
同団体のWebサイトから、費用の試算と実際の申し込みが可能です。
保険料は個人負担で、労災保険にかかる費用は、どのくらいの補償を求めるかによって変わります。給付額の計算の基礎となる「給付基礎日額」に365を掛けた値の1000分の3(ITフリーランスの場合)が年間保険料となります。
例えば、給付基礎日額を1万円とすると、365万円の1000分の3で1万950円。給付基礎日額を2万円とすると2万1900円です。
これ以外の費用として、特別加入団体としてのサイト運営費など同団体の最低限の維持費用として入会金が初回3000円、2年目以降は更新料として1500円。そして年会費が月額600円(年額7200円)がかかります。
年会費の開始月は4月からで、年途中からの加入の場合は年度末となる3月までの会費を加入時に一括で払うことになります。ただし4月に加入して3月までの12カ月分をまとめて払う場合には年会費を200円割引し、7000円になるそうです。
ITフリーランスの対象となる職種としては次の例が挙げられており、ITエンジニアからプロジェクトマネージャー、運用担当、Webデザイナーまで、かなり幅広くカバーされています。
- ITコンサルタント
- プロジェクトマネージャー
- プロジェクトリーダー
- システムエンジニア
- プログラマ
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- データベースエンジニア
- セキュリティエンジニア
- 運用保守エンジニア
- テストエンジニア
- 社内SE
- 製品開発/研究開発エンジニア
- データサイエンティスト
- アプリケーションエンジニア
- Webデザイナー
- Webディレクター
詳細は厚生労働省のWebサイトで配布されているパンフレットをご覧ください。
労災保険は、もしかしたらITフリーランスの全員にとって望まれているものというよりも、客先に常駐して働いているタイプのITフリーランスにとって望ましい施策なのかもしれません。
とはいえ、このように国の施策がITフリーランスの働きやすさを支援する方向に向かっていることは歓迎すべきことと思い、Publickeyで積極的に紹介してきました。今後も多様な働き方を支援する、さまざまな社会的セーフティネットの拡充を期待したいと思います。