低温高圧下の水には2つの状態が存在、物質・材料研究機構(NIMS)が可逆的に転移する液液転移の直接観測に成功
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物質・材料研究機構(NIMS)は2月10日、低温の水には2種類の液体状態があり、それらの可逆な液体間で転移(液液転移)することを直接観察することに成功したと発表した。これにより、摂氏4度で密度が最大になるなどの水の不思議な性質の解明につながることが期待される。
一般に、物質を冷やすと体積は小さくなるが、水の場合は摂氏4度で収縮から膨張に転じる。400年前から知られている現象ながら、科学的な説明は今もなされていない。だが近年、そこには低温で密度の異なる水が2種類存在する可能性が指摘され、それが水の不思議な振る舞いの関係していると考えられるようになった。
NIMSでは、糖質の一種であるトレハロースの低濃度水溶液ガラス(液体でありながら流動性のない状態)を用いることで、様々な温度と圧力の中での低密度状態と高密度状態の間の転移の観察を可能にした。その結果、マイナス摂氏133度(140K)以上で観測される可逆なポリアモルフィック転移(固体ながら結晶化しないアモルファスが複数存在し、その間で転移が行われること)が、液液転移であることを明らかにした。つまり、低密度状態から高密度状態への液液転移が初めて観測されたということだ。
この2つの水の状態は、室温で1気圧の水だけでなく、水溶液の物性や構造にも影響するものと考えられる。この2つの水の状態を制御できれば、水溶液や生体分子などの構造や機能を制御できるようになる可能性も生まれる。今後は、この2つの水の状態と物質との関係を明らかにして、溶液化学、低温生物学、気象学、食品工学、環境学などの低温の水に関係する分野への応用、具体的には、細胞や食品の凍結保存技術や凍結試料の解凍技術への応用を目指すと、NIMSでは話している。