理化学研究所、機械学習・最適制御技術により人の動作意図を推定し運動を精度よく支援する装着型アシストロボット

今回は「理化学研究所、機械学習・最適制御技術により人の動作意図を推定し運動を精度よく支援する装着型アシストロボット」についてご紹介します。

関連ワード (制御、対応、空気圧人工筋等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


開発した装着型アシストロボット(黒の部分)をマネキンの両足に装着

理化学研究所情報統合本部ガーディアンロボットプロジェクト人間機械協調研究チーム(古川淳一朗氏、森本淳氏)は2月15日、膝の関節に装着する軽量な「装着型アシストロボット」を開発した。機械学習により装着者の動作の意図を推定して、適切な運動支援を行うというものだ。

カーボン樹脂のフレームに空気圧人工筋アクチュエーターを内蔵した、片足わずか810gという軽量なアシストロボットだが、装着者の意図を推定することにより、様々な身体の動きに対応して、適切に目的の動作だけを支援できるようになっている。例えば、椅子に座った状態から立ち上がる場合、従来の方法でも立ち上がる動作を支援できたが、腰を浮かして遠くのものを取ろうとしたり、座り直したりといった「紛らわしい」動作の場合も、立ち上がりと判断して作動してしまう可能性がある。そこで理化学研究所は、様々な動きの中から、いくつかの動きだけを選択して支援するアルゴリズムを提案した。

機械学習では、学習の手本となるラベルを使う。たとえば、立ち座り動作のみを支援するロボットの場合は、座った状態のラベルと、立ち上がろうとして体幹が傾き始め、ロボットの支援が必要になる状態に「立位動作」とラベルを付けて学習させればよい。ただし、これでは「紛らわしい」動作のときもロボットが作動してしまう恐れがある。それを避けるには、あらゆる動作に正確なラベル付けをしなければならないが、それは不可能だ。できるだけ少ないラベルで正確な推定を行う必要がある。

理化学研究所は、立ち上がりの動作にのみラベルを付け、その他の動作にはラベルを付けずに学習させる方法をとった。そして、機械学習を使い、筋活動と関節運動のセンサー信号から支援対象の動作意図を精度よく推定する技術と、対象動作に対して個人に合わせた適切な量で支援する制御の法則(制御則)を導き出す「最適制御技術」を組み合わせて、提案アルゴリズムを実現させた。

装着者の動作意図を推定し適切な運動を支援するアルゴリズムの概要。PU-ラーニング(Positive and Unlabeled learning)で構築された動作分類(PU-分類器)から適切な制御戦略を選択する。支援対象の動作に関しては、最適制御技術iLQG(iterative Linear-Quadratic-Gaussian)を用いて制御戦略を算出する。装着者の動作意図がポジティブと推定された場合は、支援対象動作に対する「πtarget」でロボットを空気弁コントローラーにより駆動させる。ポジティブではないと推定された場合は、装着者の動きを妨げないようにロボットの重さを常に打ち消す「πother」で駆動させる

数名の被験者の協力で、このシステムの動作支援実験を行った。支援対象をイスからの「立ち上がり」とし、その他「脚を組む」「少し離れた物を手を伸ばして取る」「座り直す」という動作を想定し、ロボットの装着者から取得した筋活動と関節角度のデータに基づき、提案アルゴリズムでロボットを駆動させた。その結果、立ち上がりには100%の確率で支援動作の制御則が選択され、その他の動作では83.4%の確率で支援対象以外の制御則が選択された。

また、ロボットが装着者の動作を妨げたかを、ロボットの軌道と本来の関節の軌道との誤差で比較したところ、従来手法に比べて提案方法では誤差が小さいこともわかった。これらの結果から、理化学研究所が提案した手法は「精度よく装着者の動作意図を推定」していることがわかったとのことだ。このアルゴリズムを使えば、「一部のデータに対してだけ分類情報が整理されている状況」でも適切に運動を支援できるため、ウェアラブルセンサーが普及して多様な運動データが収集できるようになれば、ロボットによるさらなる支援技術に貢献できると理化学研究所は話している。

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