アカマイ、「世界で最も分散されたクラウド」としてエッジコンピューティングに注力

今回は「アカマイ、「世界で最も分散されたクラウド」としてエッジコンピューティングに注力」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 アカマイ・テクノロジーズは3月1日に記者会見し、米国で2月15日に発表されたLinodeの買収や2022年度の事業戦略について明らかにした。

 2021年11月1日付で職務執行者社長に就任した日隈寛和氏によると、2021年度の売上規模は約4000億円(世界では34億6000万ドル)で前年比7%の成長だった。売り上げの47%は米国外で生じており、米国外のみの成長率は前年比12%増だったという。

 営業利益率が2021年度は32%と高水準であることも強調。「安定した収益源が基盤となることで新規ビジネスへの積極的な投資が可能」といい、さらに「セキュリティ専門ベンダーを見てみると赤字の企業が多く見受けられるが、アカマイは健全に黒字を出していることもあって長期的/継続的に投資ができる」と語った。

 国内のセキュリティ事業では、2021年度は2018年度と比べて売上高が約1.4倍に伸びており、事業全体の3分の1を占める規模になっているという。日隈氏はアカマイについて「インターネットの問題を解決することが好きなテクノロジーカンパニー」だと表現。昔は純粋にコンテンツ配信網(CDN)事業者だったが、いろいろなソリューションを展開することで「少し複雑になってきた」(同氏)と振り返り、新たに掲げたミッション「オンラインライフの力となり、守る」(We power and protect life online.)とパーパス「毎日、いつでもどこでも、世界中の人々の人生をより豊かにする」(We make life better for billions of people, billions of times a day.)を紹介した。

 続いて、日隈氏は「アカマイは大きな転機を迎えている」とした上で、直近の企業買収について話した。マイクロセグメンテーション技術を持つイスラエルのGuardicoreと、開発者向けのクラウドコンピューティング基盤を提供する米Linodeになる。

 日隈氏は、同社の事業がこれまで「CDNとセキュリティの2軸だった」といい、その強みを「世界中に分散されたインテリジェントなエッジプラットフォーム」だと説明。このプラットフォーム上にソリューションを載せることで製品ポートフォリオを拡大してきたが、今後も同様に「分散されたインテリジェントなエッジプラットフォームを基盤としてアカマイは変革する」と話した。

 Linodeの買収によって、同社は「いままでにない規模で分散されたクラウドサービスプロバイダーとして、(セキュリティ、コンテンツ配信、コンピューティングの)3つの分野に先進的なソリューションを提供していく」(同氏)と強調した。

 同社 シニア プロダクト マーケティングマネージャーの金子春信氏はセキュリティ分野の最新動向を説明した。注目分野として「ゼロトラストセキュリティ」「APIセキュリティ」「アイデンティティセキュリティ」の3つを挙げ、Guardicoreのマイクロセグメンテーション技術はゼロトラストセキュリティポートフォリオに追加されて「Akamai Guardicore Sgmentation」として2022年後半から国内での提供を開始する予定だとした。

 金子氏はGuardicoreを買収した意味として、これまで同社が提供してきたゼロトラストソリューションは主に、ネットワーク境界を通過するクライアントとサーバー間の「North-South(南北)」トラフィックを対象としたものだったが、Guardicoreのマイクロセグメンテーションによってネットワーク内部で折り返すサーバーとサーバー間の「East-West(東西)」トラフィックの保護が可能になり、「ゼロトラストセキュリティのためには双方が必要」(同氏)だとした。

 Guardicoreのマイクロセグメンテーションはオペレーティングシステム(OS)上で稼働するエージェントソフトが通信状況を把握し、通信の可否を制御するという構成であることから、仮想マシンやベアメタル、Infrastructure as a Service(IaaS)、コンテナーなど広範な環境で利用可能な点もメリットだという。

 次に、APIセキュリティに関しては、従来のウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)からウェブアプリケーション&API保護(WAAP)へのシフトが求められるようになっているが、同社はこの分野でリーダーのポジションに位置づけられているという。

 アイデンティティセキュリティでは、アカウント乗っ取りや不正利用に対するソリューションとして、機械的な振る舞いを検知してボットによるアクセスを抑止する「Bot Manager Premier」や、人工知能(AI)による行動的生体認証を活用する「Account Protector」により、異常なログインを検知してブロックするという。

 コンテンツ配信とコンピューティングの取り組みについては、同社 シニア プロダクトマネージャーの伊藤崇氏が説明した。同社の基幹事業であるコンテンツ配信については今後もプラットフォームの強化を図っていく一方で、Linodeの買収によって新たに加わるコンピューティングについては、買収で取得した機能を活用して同社のエッジコンピューティング環境を開発者に開放していく形となる。

 Linodeの買収はまだ完了していないため、現時点ではあくまでも意向表明という段階にとどまるが、現在はコンテンツ配信の拠点として整備された同社のエッジコンピューティング基盤を「最適化中」だという。

 今後の取り組みとして、同社では2段階の展開を考えているとする。「フェーズ1」では(既存の)Function as a Service(FaaS)以外のコンピューティング機能の提供、続く「フェーズ2」ではエッジコンピューティングに向けた新たなプラットフォームの開発が予定される。

 伊藤氏はエッジとクラウドの違いについても言及。エッジは数千拠点が分散配置されていることからユーザーはロケーションを意識する必要がない上、スケーラビリティーはプラットフォーム側で担保されるが、クラウドはまず数十拠点からロケーションを選ぶ必要がある上、スケールさせるには追加の開発や手間が掛かると指摘した。「クラウドは万能ではない」(同氏)として適材適所の使い分けが必要だとした。

 Linodeを活用した開発の具体例として、同氏は「ちょっとした簡単なことをやりたいけど、アカマイだけでは完結できない」といった場面を挙げている。従来の同社はコンテンツ配信の部分をビジネスとしており、それ以外の部分についてはあえて手を出さないようにしていた面もあったとし、ちょっとしたことでも他社のサービスとの連携が必要になっていたという。新たにユーザーがエッジコンピューティングを活用できるようになると、同社のプラットフォームだけで必要な機能を実装でき、利便性が高まると期待される。

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