AIによる不正取引検知の仕組み

今回は「AIによる不正取引検知の仕組み」についてご紹介します。

関連ワード (特集・解説、金融犯罪の不正取引検知へのAI活用等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載は、私たちの生活でも被害を受ける恐れのある「デジタル金融犯罪」を取り上げる。前回に続き、最先端の金融犯罪対策として、不正取引検知への人工知能(AI)活用(AI不正取引検知)の可能性と当社の取り組みを説明していく。

 前回取り上げた「不正取引検知システム」とは、インターネットや現金自動預け払い機(ATM)などを使用する金融取引において、犯罪者による不正利用の可能性が高い取引を検知し、取引停止などを行う仕組みのことを言う。

 具体的には、下図にあるようにATMやPC、スマートフォンといったユーザーが取引を行う機器(チャネル)において取引をする際のログイン情報といった取引情報が、まず企業システムに連携される。次に取引情報は、不正取引検知システムに連携される。不正取引検知システムでは、企業システムから連携された取引情報をもとに、不正取引を判定する。不正取引の判定結果は、企業システムにフィードバックされ、取引監視担当者に通知して、取引停止などを判断する。

 また、企業システムで直接取引を停止する場合もある。不正との断定が難しいグレーゾーン判定の場合は、ユーザーへの確認を踏まえて、不正の有無を最終判断する。不正取引検知システムにAIを活用する場合、下図で言えば、不正取引検知システム上あるいは接続されるサブシステムにAIエンジンを実装し、不正取引の判定をAIも担うことになる。

 次に、不正取引検知システムに求められる要件を見ていく。主な要件は3つある。

 1つ目はリアルタイム性だ。不正取引を早期に検知して、迅速な取引停止・ユーザー確認などの対処につなげることが重要である。特に資金の移動を伴う取引は、取引の1週間後に不正であることを検知しても、それまでは犯罪者が好きなだけ不正取引をできてしまうので、検知した意味がない。このため、リアルタイムまたはバッチ処理で翌日までに不正を検知できれば、不正取引の抑止効果は大きくなる。

 2つ目は高い判定精度になり、検知率と誤検知率の両方で高い精度が求められる。精度の高い検知率とは、できるだけ多くの不正取引を検知すること。一方で、誤検知率はできるだけ低いこと、つまりユーザーの正常な取引を誤って「不正」と判定する件数を減らすことが求められる。誤検知率が高いと、正しい取引を誤って止めてしまい、ユーザーに迷惑を掛けたり利便性を低下させたりする。この場合、ユーザーからのクレームや問い合わせが殺到するため、コールセンターなど金融機関側の負担も高まる事態となる。

 3つ目は高い説明性だ。「不正取引」と判定した理由を簡単に説明できるようにすることも重要である。不正取引検知システムが判定した理由を説明可能な状態にして、ブラックボックス化しないことで、信頼性を高める必要がある。

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