中国・上海のロックダウンで再度注目を浴びる「団購」のリアル
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、中国・上海がロックダウン(都市封鎖)となり、「団購」という言葉が地元住民の間でよく話題になっている。団購とは、読んで字のごとく「団体購入」のこと。
中国の都市部では、集合住宅が非常に多く、防犯上の理由から高い壁で囲まれている。入口は数カ所に限られており、出入りが厳しく管理されている。ロックダウン下にあるそうした上海住民の食料調達手法の一つが団購である。住民が食料をまとめ買いして、住宅地の入口で受け取る。その上で、各戸に配って届けるというものだ。まとめて注文して、まとめて配達することで、人との接触をなるべく減らすための工夫である。
団購は、新型コロナが中国で最初に感染拡大した武漢で始まった。当時はまだIT化されることなく、各住民が必要な食材を紙に書き記して、「団長」と呼ばれる代表者に買ってきてもらうというものだった。武漢での感染拡大が収束すると、大手IT企業によって団購がサービス化された。
「仲介業者の数を減らし、一度に多くの注文をすれば、普通に買うよりもお得に手に入れられる。しかも、配達までしてくれる。これは素晴らしいサービスだ」と当時は報じられていた。しかし、そうはうまくいかなかったのである。
結論から言えば、あまりにも競合が多かったのである。例えば、生鮮食品については、団購のほかにも専用の電子商取引(EC)サービスやフードデリバリー事業を展開する美団(メイトゥアン)、阿里巴巴(アリババ)が運営するニューリテールスーパー「盒馬鮮生」(フーマー)などがある。各社が顧客を呼び込もうと常に割引しており、普通にスーパーで買うよりも割安になっている。
団購自体も複数の企業でサービスを競い合っている。メイトゥアンもデリバリーサービスとは別に団購サービスを展開している。また、1つの住宅地に複数の団長がいるケースも少なくない。例えば、住宅地でテナントを借りるコンビニや個人商店のオーナーが売上向上を狙って団長に志願する。そうすると、本来は団購を希望する住民が集まって一括で注文していたものが、さまざまなサービスに分散してしまう。それぞれの注文の数も小さくなってしまう。
団長は、住民から注文を集めるだけでなく、届いた商品を保管しておく場所も提供したり、各戸に配達したりする。それでサービス料を得る。住民とのつながりも重要だ。リアルや「微信」(WeChat)で住民とつながればつながるほど、「今日はこの野菜が安いですよ」と営業をかけやすい。利用者は、単に商品の値段だけでなく、サービスの内容も見比べている。どうせだったら重たい商品を家の前まで届けてくれる方がいい。そんな要望に応えるべく、15リットル入りのミネラルウォーターを何個も配達する団長もいる。単価は安いので運んだところで100円程度にしかならないが、顧客をキープするために必要なのだ。
団購が始まった2020年ごろの記事を見ると、競合が少なくて団長はもうかっていた。「団長になった最初のころは良かったが、競合ができてあっという間にもうからなくなった」と回顧する声は多い。ある記事では「当初は競合もなく毎日200以上の注文を受け、最高で月間21万元を売り上げた。月の収入は1万元を超えた」という。中国で月収1万元を超えれば立派なものだ。ところが「団長が次々に登場し、売り上げは3分の1、4分の1になってしまった」と状況は厳しい。
2022年に入って掲載された記事で、ある団長は「7日間で81件の注文を受け、売上額は592元だった。それで得たサービス料は33元だった」と語る。日本円に換算すると、1週間で650円、1日で100円以下だ。商品が他所より高い、欲しい商品がないといったクレームを利用者からぶつけられることもある。
そうした競争過多によって、コロナ禍の武漢で盛り上がった団購ビジネスは勢いを失っていった。しかし、上海のロックダウンで再びニーズが高まっている。
「中国でまとめ買いの団購ビジネスが失敗しました」と聞くと、単に「ダメな商売だったんだな」という感想で終わっても仕方がない。しかしそこには、もうかりそうな話に人が一斉に群がる中国にありがちな背景がある。団購というビジネス自体は競争過多でなければ、店舗側は売り上げを伸ばし、消費者は商品を安く買える、とても有益なビジネスモデルであると言える。特にロックダウンのような非常時に活躍するサービスだろう。