法人向けDXビジネスを掲げるKDDI–戦略を読み解く

今回は「法人向けDXビジネスを掲げるKDDI–戦略を読み解く」についてご紹介します。

関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 KDDIは、5月13日の記者会見で2024年度を最終年度とする中期経営計画を発表、その中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)事業を注力領域の1つに掲げた。DXの推進で、「NEXTコア」事業の売上高の年平均成長率で2桁を目指すほか、ビジネスセグメント全体でも2桁の成長を計画。2024年度には、KDDIグループの連結営業利益の約2割に高め、DXを軸にした法人事業を加速させる考えだ。

 会見した代表取締役社長の髙橋誠氏は、「新中期経営計画の成長の中心は法人事業。DXの売上高は年平均成長率で2桁を目指す。ビジネスセグメントを国内通信に次ぐ第2の柱にする」などと述べた。

 KDDIの法人事業は、通信サービスを展開するコア事業と、DX支援をはじめとしたNEXTコア事業で構成される。NEXTコア事業では、顧客のスマートワークを支援する「コーポレートDX」、IoTを中心とした「ビジネスDX」、データセンターやコールセンターの「事業基盤サービス」に取り組んでいる。

 新中期経営計画で注力領域の一つに位置付けたDXでは、5Gを中核にグループアセットを活用した提案を加速させる。人々の暮らしをトランスフォームするDXの好循環を目指すほか、通信が溶け込む時代に最適な運用管理のノウハウをさらに進化させる。IoT回線では、グローバルパートナーと培った運用・保守体制の強みを生かし、2024年度には契約数を4400万回線にまで増やす。「つながり続ける安心感を加えたDXにより、新たな価値をパートナーとともに共創していく」と同氏は述べた。

 DXの成長において、新たな付加価値を生み出すために、ビジネス創造をサポートする業界ごとのプラットフォームの提供を計画する。自動車、鉄道、建設・不動産、エネルギー、メディアなどを対象に、「通信の運用に加えてIDおよび認証管理、決済、データ分析などの豊富なアセットのほか、5Gのネットワークスライシングによる帯域保証を組み合わせて、企業や業界ごとに適したソリューションを提供していく」とした。

 高橋氏が挙げたDXビジネスの導入事例として、JR東日本では映像伝送を活用して場所や時間に捉われない働き方や暮らし方を実現する分散型まちづくりを推進する空間自在プロジェクトに取り組んでいる。三井物産では、人流シミュレーションを活用して、人と都市に関わるさまざまなデータを分析し、独自のアルゴリズムによって未来を予測する、将来のスマートシティー開発に応用する。さらに電源開発では、ドローンによる点検を活用して、風力発電設備の点検をオートフライトとAI解析で自動化、効率化しているという。

 高橋氏は、「IoTによって通信を自動車や工業設備、各種メーターなどに“溶け込ませ”、顧客が意識することなく5Gを活用できる環境を整備する。さまざまな業界ごとの個別ニーズに応じたビジネスプラットフォームを提供し、顧客のビジネス創造をサポートする」との姿勢を示した。

 また、DX開発体制の整備およびリソースの拡充も図る。社内に「DX推進本部」を新設。事業開発やコンサルティング、DXサービスの企画、システム開発の機能を垂直統合し、これらを一気通貫で提供する体制を構築する。さらに、「KDDI Digital Divergence Holdings」を新設し、その傘下にKDDIアジャイル開発センター、アイレット、KDDIウェブコミュニケーションズ、Scrum Inc.Japanのほかグループ各社や、新規の合併・買収(M&A)による開発の機能を統合し、グループ内の連携強化や多様なDX人材の拡充を図る。

 高橋氏は、「これまでにも金融ではauフィナンシャルホールディングス、エネルギーではauエネルギーホールディングスなどの形で持株会社化しており、成長領域でこの仕組みを用いている。DXについては、ビジネスをKDDI本体で行っていくが、開発体制の強化という観点からKDDI Digital Divergence Holdingsを設置し、足りない領域があれば、この会社がM&Aをやっていく。アジャイル開発の能力を強化していく」とした。

 加えてDX人材の強化は、既に「DX University」を設立して育成を本格化しているが、新中期経営計画においては、1万1000人の全社員のDXスキル向上とともに、プロフェッショナル人材の育成に着手し、全ての専門領域でプロフェッショナル人材の比率を30%に高める。

 「DX Universityを活用して、DXを中心に事業戦略を推進するための組織力を最大化する。プロフェッショナル人材に対しては、KDDI版のジョブ型人事制度の浸透を同時に進める。また、DX人材の育成では、この取り組みをグループ全体に拡大し、注力領域へのシフトを図る」(高橋氏)と説明した。

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