第2回:米国SaaS業界のデータエコシステムがもたらす業務効率

今回は「第2回:米国SaaS業界のデータエコシステムがもたらす業務効率」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ、誰一人取り残さない、ユーザー中心のDX改革等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「Product-Led Growth(プロダクトレッドグロース、PLG)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。コロナ禍の2021年ごろから、日本の主要メディアでもPLGという言葉を目にする機会が多くなってきた。

 PLGとは、「プロダクトでプロダクトを売る」という米国SaaS企業の成長戦略を表した言葉である。対義語になるのが、「Sales-Led Growth(セールスレッドグロース、SLG)」だ。以前は、シリコンバレーの企業などでもSLGの思想により、売上成長のキードライバーとして営業部員を多く採用し、その点を投資家に評価され、企業価値が上がっていったと言われている。

 一方で、PLGは真逆の思想で、いかに営業部員の工数を減らして有償顧客を増やし、売上成長を伸ばすかが鍵となる。

 米国ではよく、「フリーミアム」という言葉を聞く。“無償でのトライアル利用から、有償ユーザーへ変えていく”、まさにPLGの戦術だ。フリーミアムを活用して、コロナ禍で大きく成長したのがウェブ会議ツールの「Zoom」である。

 PLGを実践する中で重要になるのが、ユーザーを理解するための「データ」だ。Zoomはビジネスミーティングの平均時間が45分であることをデータから導き出し、無償ユーザーのビデオ会議を40分間に制限した。Zoomでのオンライン商談の価値を無料で体験してもらいつつ、ビジネスで使うには少しばかり不便さを感じる絶妙な時間設定にすることで、有償ユーザーを増やしていった成功例だ。

 ここで注意したいのが、PLGは「営業部員を完全に排除し、全ての営業活動をデジタルによる『自動化』にシフトすることではない」ということだ。

 フリーミアムのようなビジネスモデルは、個人事業主や中小企業のように、ソフトウェアを「体験」している人(=ユーザー)と、購入の「意思決定者」が同一人物の可能性が高い場合に有効だ。それらのユーザーは、ソフトウェアの価値を感じれば購入の意思決定は早いが、その分顧客単価も安い。そこで、顧客単価が安いユーザーへのプレゼンやデモを、コストの高い営業部員が実施するのではなく、代わりに「プロダクト体験」が営業の役割を担い、購買を促す。それによって、営業部員はより単価が高く、購入の意思決定が複雑で時間のかかる大手企業/エンタープライズに注力し、業務効率を上げることができる。これがPLGの本質だ

 昨今では、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的な景気後退への懸念が高まる中、米国の投資家は企業の成長だけではなく、効率化を求め始めているとも聞く。データドリブンな組織は、ますます重要度を増してきていると言えるかもしれない。

 それでは、データ活用と業務の効率化を追求する、筆者が実際に体験した米国SaaS企業での従業員体験を少し紹介しよう。筆者は、2020年の11月にPendo.io(以下、Pendo)の日本法人で2番目の社員として入社した。1番目の社員であるカントリーマネージャーから1週間遅れでの入社だ。

 従来であれば、入社して2週間ほど米国ノースカロライナ州にある本社で、新入社員研修を受けるところだが、コロナ禍による海外渡航制限により、現地に行くことはかなわなかった。そこで、PCの設定から日々の業務の理解も全て、米国の地球の裏側、時差も距離もある日本で、リモートで行う必要があった。

 業務用PCとなるMacBookは、本社のIT担当が事前に手配してくれていたので、入社日には手元に届いていた。事前に送られてきていたドキュメントに従ってセキュリティ環境を設定し、IT担当とZoomで最終確認して、すぐに完了となった。

 Pendoでは、社内業務は全てクラウドのソフトウェアで成り立っている。自分で使いたいソフトウェアは、「Jamf」というモバイルデバイス管理(MDM)上で管理されているセルフサービスポータルから、アクセス権をリクエストするだけで使用できるようになっている。AppleのApp Storeを使い慣れているユーザーには、Jamfの管理画面は使いやすい。

 ほぼ全てのソフトウェアは、シングルサインオン(SSO)でユーザー認証してくれるので、いちいち設定に戸惑うこともなかった。

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