第63回:“年収1200万円”のひとり情シスが誕生か

今回は「第63回:“年収1200万円”のひとり情シスが誕生か」についてご紹介します。

関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 年収1000万円の大台を超えることを「1000万円プレーヤー」と呼びますが、この“1000万円”という大台の基準は30年ほど変わっていないように思われます。厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査」では、国民の所得金額の年収別分布が発表されています。この年収には給与所得だけではなく、役員賞与や不動産所得、利子所得、一時所得も含まれています。最近はITエンジニアやコンサルタントも個人事業主になったり、小規模の会社を設立したりすることが多く、その事業所得も対象です。

 この調査によると、最新の2021年は1000万円以上が12.4%、その内で1200万円以上は7.3%でした。ところが20年さかものった2001年は1000万円以上が15.8%、1200万円以上は9.5%でした。日本国民における1000万円プレーヤーは減少していることが分かります。失われた20年、30年は高額所得者の減少割合からも見てとれます。

 国税庁の統計情報でも給与所得の年収別分布が調査されています。この調査によると年収1000万円以上は2016年で4.2%、2017年で4.5%、2018年で5.0%、2019年で4.8%、2020年で4.6%でした。コロナ禍の影響もありますが、直近5年間は上昇傾向にあります。外資系IT企業やコンサルティング会社、大手システムインテグレーター(SIer)では年収1000万円を超える社員が増加しており、それが数字に現れ始めています。

 ITベンダー各社や人材サービス企業が実施するITエンジニアを対象とした年収分布の調査からも、1000万円プレーヤーは約3~7%ほど存在していることが判明しています。2021年末に行った「ひとり情シス実態調査」でもひとり情シスの4.4%は1000万円プレーヤーであることが確認されました。

 中堅中小企業であってもITの重要性を理解し、社長直下に参謀格のひとり情シスを配置する会社では、その給与も他社よりはるかに高いです。仮にそのひとり情シスの年収を800万円とします。この方は着任以降、ハードウェアの統合、取引ベンダーの整理とサポート内容の吟味、パートナーに依頼していた帳票などの作成や変更を内製化、社内のデータを抽出・分析して作成した経営ダッシュボードで社長にレポート、電子商取引(EC)サイトを構築して新しい販売チャネルを築くことによる新規ビジネスの獲得など、縦横無尽の活躍をしました。

 この全ての効果に対して数字の可視化をしました。まず、外部からのサポートにかかる年間費は1800万円から960万円に減額。帳票などのプログラムの一部修正にかかっていた年間約500万円が内製化することでゼロに。削減したコストの一部を営業支援のシステムに投資しました。ECサイトによる新規ビジネスは全体の売り上げの3%に相当していましたが、利益率でみると12%となり大きく貢献していることも分かりました。

 こうして全ての取り組みを金額に換算して足し合わせていったところ、4000万円ほどの粗利となりました。一過性のコスト削減もありますので、永続的に利益を生み出すわけではありません。また、粗利に貢献した数字全てが個人の給与になるわけではないことも理解されています。しかし貢献額の10%ほどは認められてもよいだろうと考え、元の年収800万円に400万円を加えた1200万円が適正年収であると自己査定しました。付き合いのあるITベンダーの営業職の方が粗利の5%が賞与で貰えると聞いて、自身は本業利益への貢献なので少し多めに計算しました。

 この試算額を冗談交じりに社長と話してみました。この金額がすぐ給与に反映されるといううまい話はありませんが、ITの支出金額の増減を理解している社長が少ないのは事実です。この話題をきっかけに、IT活用による資金の出入りの意味を考えるようになったといいます。その後、この方は基本給も上がり、会社の好業績や賞与が加わった結果、1000万円に近い年収になったようです。今後はコスト削減での粗利向上ではなくて、投資対効果(ROI)が300%を上回れば粗利の5%を上乗せして交渉する「攻めのひとり情シス」として進言したいと考えているようです。

 コストを詳細に計算し、自身の給与を換算することはエンジニアとしてのプライドにかかわるかもしれません。また、従業員として勤めている以上、そうした実績を個人の給与に反映させることを嫌う社長もいます。あくまでも、先の1200万円を提示したひとり情シスは事例の一つとして捉えていただければと思います。

 IT担当者や情シスをコストセンターと断じる論調は依然あります。しかし、コストを可視化することで、その増減の内容を明確にし、生きた投資がビジネスへ貢献することを経営層に理解してもらうことは重要です。

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