中国の債務回収業界でAI導入が進む理由

今回は「中国の債務回収業界でAI導入が進む理由」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2023年以降、中国でも生成AIブームが巻き起こり、多種多様なサービスが次々とリリースされている。多くの業界が生成AIの導入を模索しているものの、特定の業界や業務向けの生成AIはまだ黒字化に至っていない。しかし、債務回収業界はその中でも数少ない導入が進んでいる業界の一つである。特に、拍拍貸の「智牛」という債券回収AIが有名であり、その他にも追一科技、捷通華声、浦東開発銀行などが同様の技術を開発している。

 中国の経済が低迷する中、倒産件数が増加し、各金融機関による借金の取り立ては年々厳しさを増している。借金の取り立てはしつこく行う必要があるケースも多く、未返済の案件が増えることで、人的資源、物的資源、時間的コストが膨大にかかってしまう。しかし、こうした債券回収の問題はAIの登場により一変した。AIの導入により回収効率が大幅に向上し、ある記事では2倍、債券回収AIを開発した企業によれば8倍から10倍もの効率向上が見られると報告されている。

 では、なぜ借金の取り立てに生成AIは向いているのだろうか。

 借金取りが活躍する漫画などのコンテンツを見たことがある人なら、電話をひたすら掛け続ける作業がどれほど大変か想像できるだろう。これに加えて、ショートメッセージサービス(SMS)やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)でのダイレクトメッセージ(DM)送信も行われる。さらに、中国でもコンプライアンスが厳しくなっており、回収において暴力行為などのNG行為が増え、難易度がさらに高まっている。

 誰にも不快感を与えずにお金を取り戻すことは、回収作業において最も難しい課題の一つである。最近では規制政策やコンプライアンス要件が厳しくなっており、債務者が何か間違ったことを言うと、すぐに苦情を申し立てられ、罰金を科されたり、場合によっては訴訟を起こされたりするリスクがある。そのため、回収業者は常に警戒し、従業員を訓練する必要があるが、それでも全ての回収が規制に従って行われる保証はない。

 AIによる債権回収は、業務の標準化を実現するだけでなく、手動での回収時に発生し得る不適切な言動を回避し、法的リスクを軽減するというメリットがある。債権回収AIは、豊富なデータベースを活用して、汚い言葉や侮辱的な言葉、さらには「個人情報を漏えいする」といった脅迫的な言葉など、「超えてはいけない一線」を自動的に除外する。その結果、AIによる債権回収の全ての通話が品質検査に合格し、適切であることが保証される。これにより、手動による回収よりもはるかに安全に運用されている。

 また、AIによる債権回収は、人手による回収に比べて非常に効率的だ。どれほど体力に自信がある借金取りのプロでも休息が必要だが、債権回収AIには休息が不要である。昼夜を問わず作業を続けることができ、作業効率が大幅に向上する。同じ時間内でAIがかける電話の数は、人間の数倍に達する。また、全ての相手に同じ電話をかけるのではなく、各ケースを分析して最適な回収シナリオを構築し、自動で稼働し続ける。

 セールスの電話やSMS/SNSでのDMは、嫌なら受け取らずに無視することができる。しかし、債権回収AIは拒否対応をしても、さまざまな手段を駆使して無数の催促を続ける。AIは借金を抱えた人々とのやりとりをビッグデータとして蓄積し、どのタイミングでどのようにアプローチすれば効果的かを熟知している。債権回収AIはしつこくも効果的なアプローチを繰り返し、DMや電話が来ること自体が嫌になり、最終的にはしぶしぶ応答することになる。応答後は手動エージェントに転送され、応答が続けられる。応答しない場合でも、「無応答」や「空」などのスマートラベルが自動的に生成される

 一見すると冷酷に見えるAIだが、債権回収AIのインテリジェント戦略エンジンは、債務者の返済記録、信用履歴、収入レベルなどのデータを収集・分析し、その人が返済能力があるにもかかわらず意図的に債務不履行をしているかどうかを判断する。返済能力があると判断された場合はより厳しい措置が取られるが、本当に困難な状況にある人にはより穏やかな措置が取られるという。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
「Kubuntu」を使えば分かる「KDE Plasma」の信頼性と使いやすさ
IT関連
2023-07-12 19:38
資生堂、販売・顧客分析システム基盤をクラウド移行–運用コストを約20%削減、夜間バッチを約90%高速化
IT関連
2025-02-05 15:35
OpenAI、「OpenAIの12日間」で製品発表やデモをライブ配信
IT関連
2024-12-06 13:20
「Amazon S3より80%安い」– Wasabi Technologies、APAC地域の本社を日本に設立
IT関連
2021-06-25 01:48
AIにフルスタックアプリの生成を指示、Webブラウザ上のNode.js環境でそのまま実行できる「bolt.new」、StackBlitzが公開
JavaScript
2024-10-07 00:43
Google ChromeのDevToolsがAngular、Vue、JSX、Dart、LESS、SCSS、SASSなどのシンタックスハイライトに対応
Angular
2023-02-22 14:45
「学校の机、PC置くと狭すぎ」問題解決へ 「天板拡張くん」登場
くらテク
2021-03-10 03:16
サイバネットら3社、XR技術を活用した都市設計ツールを開発–市民参加型のワークショップ実施
IT関連
2023-04-27 16:24
KDDI、25年度中に「大阪堺データセンター」稼働へ–生成AIモデルの高速開発に対応
IT関連
2025-04-06 15:28
IIJ、データセンターの脱炭素化の取り組みと新施策を発表
IT関連
2023-04-26 23:56
信金とNTT東西の提携がもたらす全国中小企業のDX推進へのインパクトとは
IT関連
2022-09-17 21:08
リコー、多様な働き方を管理するグループ共通基盤を構築
IT関連
2022-10-04 14:59
新型コロナ変異株 短時間の会話でもリスク急上昇 スパコン富岳分析
IT関連
2021-06-25 22:32
2025年までに企業の30%が「リモートファースト企業」へ転換–ガートナー予測
IT関連
2021-04-08 23:31