アイルランドにおけるサイバーセキュリティの最新事情
今回は「アイルランドにおけるサイバーセキュリティの最新事情」についてご紹介します。
関連ワード (世界のICTが集まるアイルランド、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
サイバーセキュリティの調査研究を行うCybersecurity Venturesによると、サイバー犯罪による被害額は年間6兆ドル(4兆8500億ユーロ)と推定され、この数字は世界経済のほぼ10%に相当するとのことです。また、米メリーランド大学は、研究によって世界中で平均39秒に1回のハッカー攻撃が行われていると指摘しています。このようにあらゆる情報がデータ化され、世界中からデータ化された情報へのアクセス可能となった現在社会においては、サイバーセキュリティの対策・対応が急務となっています。
外務省のサイバー政策担当大使を務める有馬裕氏は、サイバーセキュリティに関する国連のオープン・エンド作業部会において、サイバー空間があらゆる活動にとって不可欠な経済・社会インフラとなったことにより、各国がサイバー攻撃に対して脆弱になり、大きなセキュリティリスクを抱えることになったと指摘しています。外務省では、自由で開かれた安全なサイバースペースを守り、強化するためには、各国・各地域との協力と連携が最も重要であると考え、さまざまな取り組みを行っているようです。
こうした中でアイルランドは、高付加価値産業クラスターの発展を促進する貿易・投資促進政策などの海外市場にとって魅力的な資産や資格を数多く有しており、サイバーセキュリティ分野においてもその重要性をいち早く認識し、国家を挙げてその対応に当たったことで、現在では世界の主要なサイバーセキュリティ大国の一つとなっています。
アイルランドには、サイバーセキュリティソフトウェアの世界トップ10企業のうち6社が進出し、産学官で関連スキルを持つ3万人の専門家がいます。さらには欧州連合(EU)全体のデータのうち約30%を保有し、欧州委員会の「デジタル経済社会指数(DESI)2019」では、EU加盟28カ国中7位にランクされています。
こうした事実や状況を背景にアイルランド政府は、早くからサイバーセキュリティを国家戦略上の重要課題と位置付けるとともに、国際法が適用されるサイバー空間上の脅威への対処や規範の構築などには政府間レベルでの交渉や連携が必要になることを踏まえ、国内のサイバークラスターを対象とした正式な組織・団体を設立する必要性を強く認識し、その準備に取り組みました。
その結果、2019年に「アイルランド・サイバーセキュリティ・クラスター」が正式に発足しました。アイルランド政府産業開発庁の支援を受けたこのサイバーセキュリティ・クラスター組織は、この分野のニーズを代表するステークホルダー(課外関係者)を集め、全国的なクラスターに属する企業や組織のイノベーション、成長、競争力を強化することを任務としています。