カシオが「MY G-SHOCK」で目指す、顧客体験中心のビジネス構築
今回は「カシオが「MY G-SHOCK」で目指す、顧客体験中心のビジネス構築」についてご紹介します。
関連ワード (マーケティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
カシオ計算機(以下、カシオ)は2021年10月20日、とても頑丈で壊れにくい腕時計として広く知られる「G-SHOCK」を自分好みにカスタマイズできるサービス「MY G-SHOCK」を開始している。サービス提供の背景や仕組み、展望などについて、同社 執行役員 デジタル統轄部長の石附洋徳氏に聞いた。
G-SHOCKは1983年から販売を続けている腕時計ブランドで、まもなく40周年を迎える。同社では、「コロナ禍は数年後が見通せない不安定な状況。われわれは消費者に寄り添い、新たな価値を提供することに踏み込んでいく。モノを作って、届けて終わりではなく、消費者に素晴らしい体験を通じて、喜びや新しい価値を感じていただくところまでコミットしなければならない」(石附氏)と昨今の状況を鑑みて、消費者と直接つながるためのデジタルツールを求めた。
だが、そこに至るまでは2つの課題があったと石附氏は語る。「1つはユーザーと直接つながる方法。G-SHOCKは年間1000万本近く販売されているが、実際に1000万人とつながることは難しい。これについては、われわれのデジタルタッチポイントを拡大してグローバルプラットフォームを構築していく」
もう1つは、消費者とつながった後の価値創造で、例えば、お得な情報や会員限定のコンテンツ配信など具体的なサービスを提供しなければならず、本当のG-SHOCKファンにはならない。「(消費者に)接点を持っていただくためのモチベーションを作ることが重要だ」と石附氏は話す。
実際、カシオではG-SHOCKファンに向けて、レストアサービスやファンイベントを実施/開催していたりするが、この2つの課題を解決方法としてたどり着いたのが、顧客体験管理(CXM)基盤「Adobe Experience Cloud」である。
カシオはMY G-SHOCKのサイト構築・運用に、コンテンツ管理や消費者行動の取得などのツール群を包括したスイート製品のAdobe Experience Cloudを利用し、“世界に一つだけのG-SHOCK”を作れるサービスを展開した。MY G-SHOCKの利用者は、スクエアデザインの「DWE-5610」をベースに、ベゼル・バンド・フェイス・遊環(ゆうかん)などのパーツの色を選び、自分好みのモデルが作れる。ベゼル・バンド・遊環は、それぞれサービス開始時の限定カラーを含め19種類以上のバリエーションを取りそろえ、約190万通りの組み合わせから選べる。さらに、3つのループで構成されるトリプル遊環を選択すれば、約4億8000万通りの組み合わせ(数量限定のパーツを除く通常のパーツのみ)が可能という。
また、新たなユーザーとのコミュニケーションの試みとして、同社のデザイナーがおすすめするカスタマイズデザインも用意。今後は、定番パーツのバリエーションに加えて、限定カラーの展開などシーズンごとのスペシャルテーマやタイアップ先とコラボしたカスタマイズなども展開している。
石附氏はMY G-SHOCKについて、「これまでG-SHOCKとなじみの薄かった女性などにもアピールできるサービス。近日中にも大きな展開を予定している」と説明した。
カシオでは、2021年3月からウェブサイトを「Adobe Experience Manager Sites」、電子商取引(EC)サイトを「Adobe Commerce」で構築している。石附氏は「カスタマイズ系サービスを立ち上げられたのは、アドビのプラットフォーム力」だと評しつつ、「Adobe Substance 3D Collection」とAdobe Experience Manager Assetsのダイナミックメディア機能を組み合わせて、カスタマイズ後のG-SHOCKの商品画像をリアルに描画する仕組みを構築できた点を高く評価した。「自分でカスタマイズしたG-SHOCKの商品画像が注文画面や配送メール、購入履歴などさまざまなところに適用され、顧客体験の向上に役立っている」(同氏)
石附氏によると、MY G-SHOCKのサービスを構成するシステムを約5カ月で構築・実装したという。「(アドビの)開発組織の技術力と、既に同社製品を導入していたのが大きかった」と同氏は振り返る。
MY G-SHOCKのビジネス効果について、石附氏は「立ち上げ当初は想定の何倍ものご注文をいただいた。ただ、われわれはまだG-SHOCKになじみのない購買層も重視しており、新たなユーザーに対する接点のすそ野を広げたい。今後はサプライチェーンの構築改善を継続しつつ、既存製品や新製品にも影響を与えたい」と述べながら、カシオ全体にデジタルタッチポイントを増やすサービスを提供したいと今後の展望を語った。