New Relic、部門横断でトラブル原因を特定する新機能–小売業の課題にアプローチ
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オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームを提供するNew Relicは2月22日、同社が実施した「小売業界におけるオブザーバビリティの現状」の調査結果を解説するとともに、同プラットフォームの新機能「New Relic Pathpoint」を提供開始したと発表した。併せて、三越伊勢丹システム・ソリューションズが、チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」におけるNew Relicのプラットフォームの活用事例を紹介した。
オブザーバビリティについて、同日開催の発表会に登壇したNew Relic コンサルティング部 兼 製品技術部 部長の齊藤恒太氏は「システム全体のデータをリアルタイムに取得し、状態を常に把握・改善できる状態」と説明した。
齊藤氏は、調査結果の前段として小売業の現状を解説。同氏は総務省・経済産業省による「2022年経済構造実態調査」の結果を引用し、国内小売業の売上金額は全業種で最も高く、全体の約3割(約478兆円)を占めると説明した。一方、情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、卸売/小売業においてDXに取り組んでいる企業は23%にとどまっており、情報通信業(45%)、金融業(同)などに比べて遅れをとっているという。
小売業におけるDXの推進には複数の課題がある。ECはフロントエンドから商品管理などの基幹系システムまで複数のシステムで構成されており、結果として各システムを担当するチームがサイロ化し、トラブルへの対応に時間がかかることがある。加えて近年は「ユニファイドコマース」など、デジタルとリアルを融合させる動きが活発化しており、データの連携は一層複雑化している。さらに、多くの企業ではDXの内製化が進んでおらず、ベンダーやシステムインテグレーター(SIer)に依存している状況だ。
New Relicが実施した調査では、オブザーバビリティに関する意思決定者と実務担当者を含む、世界15カ国約1700人(日本125人)の技術プロフェッショナルを対象とし、小売/消費材業では173社の回答を集計した。
同調査によると、「週に1回以上の頻度で重大障害が起きている」との回答は全業種平均の32%に対し、小売業では36%に上ったという。重大障害の検知時間別の企業割合を見ると、「30分以上かかる」との回答が全業種平均では44%だったが、小売業では55%だった。自社アプリの停止による金銭的損失も大きく、年間のシステム停止コストの中央値は全業種平均が775万ドルなのに対し、小売業では995万ドルと28%も高額だった。
しかし、オブザーバビリティにいち早く投資した小売企業は、高い投資対効果を実感している傾向がある。そうした企業では年間の投資利益率(ROI)が平均2倍となっており、47%がオブザーバビリティの利点として「顧客体験(CX)への理解を深めることで、収益維持率を向上させられる」(全業種平均34%)と回答した。齊藤氏は「オブザーバビリティ機能の導入分野の少なさや、複数ツールの活用によるサイロ化が課題となっているが、CXの向上がトリガーとなって導入が進んでいることも事実である」と解説した。
同社のオブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」は、ユーザー体験からインフラまでをリアルタイムに追跡し、ステークホルダー全員にシステム全体の可観測性を提供する。
ECでは、フロントエンドとEC/在庫管理/決済機能といった複数のアプリケーションが連携しているが、従来のシステム監視はインフラ部分にとどまっているという。これにより、システム担当者はエンドユーザーに影響する問題がアプリケーション部分で発生しているのに気付かず、結果としてクレームや顧客離れが発生することがある。問題に対処する場合も、部門間における責任の押し付け合い、チーム間におけるやりとりの長期化、非効率なログ調査などが懸念される。
New Relicを活用して自社サービス全体を観測することで、担当者はフロントエンドから全アプリまでを一気通貫で確認でき、問題点を詳細かつ素早く把握することが可能になるという。エンドユーザー側の問題も把握でき、先手を打って対応することでCXの維持・向上が期待される。データの統合により、チーム間におけるやりとりの簡素化や効率的な対応も見込まれる(図1)。
小売業における同プラットフォームの導入メリットについて、齊藤氏は「CX改善による収益向上」「EC/基幹システムの安定稼働」と攻めと守りの両方を挙げた。加えて、運用業務を効率化・自動化することで、運用やツール、インフラにかかるコストを最適化できるとしている。