テクノロジーの環境負荷を削減–最北の国アイスランドの取り組み
今回は「テクノロジーの環境負荷を削減–最北の国アイスランドの取り組み」についてご紹介します。
関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
Ljosafoss水力発電所の地下空洞の中に立っていると、何千リットルもの水が流れる轟音が鳴り響く。水がパイプを通り、発電所のタービンから下の川へと流れ込む過程で膨大な電力を生み出している音だ。
ほんの数時間前には世界最大級の地熱発電所であるヘトリスヘイジ発電所で、空に噴き上がる高温の蒸気柱を、あたかも月面のような風景だと思いながら眺めていた。
ここアイスランドには、実にたくさんの水力発電所や地熱発電所がある。この国の電力は、約70%が水力、約30%が地熱で賄われている(風力発電も若干ある)。
欧州のほかの国々が燃料価格の高騰に見舞われ、冬の計画停電を憂慮する中、アイスランドはその天然資源を活用して、電力のほぼ100%に再生可能エネルギーを使用している。Landsvirkjunが運営する水力発電所やON Powerの地熱発電所などが、家庭や車からデータセンターまで、あらゆるものを動かす電力を生み出している。
こうした大規模な開発は、エキサイティングで先駆的な取り組みであると同時に、組織の炭素排出を削減し、グリーンクレデンシャルを推進する責務を担う技術プロフェッショナルにとっても、重要になる可能性がある。
テクノロジーは、われわれの生活を改善できる力を持つ一方で、データへの依存が高まることは、環境への大きな負担を生み出しつつある。
IT業界は、世界の炭素排出の2~3%を占めると推定されている。そしてIT分野で温室効果ガスを最も多く排出しているのはデータセンター(45%)だ。
情報へのニーズが増え続けることで、環境に対するプレッシャーは増大し、排出のリスクも増える。それならば、こうした需要に対してより持続可能な方法で対処できないだろうか。
欧州の最北にあるアイスランドは、発電施設、データセンター、海底ケーブルを提供する企業のグループが各社のリソースを組み合わせることで、より環境に優しい代替手段を提供できると考えている。
データセンター事業者Verne Globalで最高技術責任者(CTO)を務めるTate Cantrell氏は、この取り組みを主導している1人だ。同社の施設では、アイスランドの水力発電や地熱発電など、持続可能なエネルギーによってすべての電力が賄われている。
Cantrell氏によると、持続可能性が取締役会だけでなく自社製品の最終顧客にとっても等しく重要であることに気付いている、大企業に所属する専門家は増えているという。
消費者は、自身の環境配慮の信条が製品の生産活動によって損なわれることを望んでいない。そしてテクノロジーは紛れもなく、その生産プロセスの一部となっている。
コンサルティング企業Deloitteの調査によると、生産プロセスにおける廃棄物の削減と、カーボンフットプリントの抑制は、環境的に持続可能またはエシカルな慣習として、消費者が最も重視する上位5項目に含まれている。
一部の企業は既に、ITが生産プロセスで果たす役割を認識している。例えばCantrell氏は、Verneの長年の顧客であるBMWを例に挙げた。
「BMWが2012年に当社を選んだのは、同社が持続可能な次世代自動車を製造しているだけでなく、データセンターが自動車を構成する原材料の一部であることを認識していると、世界に証明したかったからだ」と、同氏は説明する。
同氏によると、生産プロセスの一環として、持続可能なコンピューティングパワーへと移行する動きは減速する傾向にはなく、製造や金融分野の企業でも同様の動きが見られるという。
2009年以来、高性能コンピュート技術を大規模に提供している、アイスランドのデータセンター事業者atNorthの最高商業責任者(CCO)Gisli Kr.氏も同じように感じている。
「今は、環境的に持続可能な計算能力が、以前より低いコストで利用可能になった。当社の顧客は企業だが、この点については主要な企業との会話で話題になっている」(同氏)