疑似量子の活用で材料開発期間を約20%削減–日立が有効性を実証
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日立製作所(日立)は、積水化学工業と進めているマテリアルズ・インフォマティクス(MI)推進に向けた協創活動において、材料開発の加速につながる新たな機械学習モデルを開発し、その有効性を実証した。同社が12月16日に発表した。
これまでの材料開発は研究者の経験や勘に依存し、実用化までに長い時間と費用を要していた。一方で、市場では製品ライフサイクルの短命化、資源の制約などを起点として材料開発への要求が多様化・高度化しており、その要求に応えるべくMIへの取り組みが本格化している。日立はデータを活用して材料開発プロセスを効率化するデータ管理/アナリティクス基盤の実現に向けて、技術開発を積み重ねるとともにMIを適用した「材料開発ソリューション」を「Lumada」ソリューションの1つとして提供し、素材産業をはじめとするさまざまな顧客のニーズに応えてきたという。
新たな材料の開発では、あらかじめ機械学習により材料の特性を予測し、有望な材料に絞って開発を進めることで開発期間を短縮する取り組みが検討されている。具体的には、(1)材料に関する既存のデータを人工知能(AI)が学習することにより、材料の特性を予測する予測モデルを構築、(2)得られた予測モデルを用いて、実際に開発したい材料の作成に最適な条件を探索する。
このような取り組みで用いられる機械学習には、少ない実験で有用な材料の候補を見つけるために、材料の特性を高い精度で予測する技術が求められる。予測精度の向上にはAIが複数の変数を組み合わせた複合条件で学習することが有効だが、材料の作成に関わるさまざまな条件を考慮するとその組み合わせは膨大になる。従来はデータサイエンティストが経験や勘に基づき組み合わせる条件を選び、予測モデルを構築していたが、条件を網羅的に検討していないため精度向上に限界があった。
日立は、機械学習モデルの構築において、MIでも一般的に用いられる決定木アルゴリズムに、疑似量子コンピューター技術であるCMOSアニーリングを導入し、材料の作成に関わる条件を網羅的に考慮することで予測精度を高める新たな手法を開発。このようにして構築した高精度予測モデルを、既存の有機材料の分子構造からその特性を予測する問題に適用した結果、機械学習による予測精度向上において高い性能を示す従来技術「LightGBM」「XGBoost」に同手法を適用した際の予測精度が、従来技術単独での予測を上回る精度を達成した。さらに、同技術を用いて材料開発を行った場合、従来のMIを用いた方式に比べ、開発に要する期間を約20%削減できる見通しを得た。
同技術は、決定木アルゴリズムを用いる機械学習の予測精度向上に広範に適用可能。今後、Lumadaの材料開発ソリューションとして実用化を進め、半導体や電池、創薬など、企業の多様な材料開発の効率化を目指すとともに、物流、生産領域を含めた分野でも同技術の適用を推進することで、企業の創出する社会価値向上の加速と、サステナブル(持続可能)な社会の実現に貢献していくとしている。