日本オラクル社長が「基幹システムのレジリエンス向上」を強調した理由とは
今回は「日本オラクル社長が「基幹システムのレジリエンス向上」を強調した理由とは」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏と、NTTデータ 代表取締役社長の佐々木裕氏の「明言」を紹介する。
日本オラクルは先頃、メディアやアナリスト向けの新年懇談会を本社内のカフェテリアで開いた。三澤氏の冒頭の発言はそこでのスピーチで顧客ニーズについて述べたものである。
三澤氏はまず景況感について、「日本の景気は悪くない状況だと思うが、世界の情勢と相まって不透明感もある。不透明感があるうちは、経営としてはやはり締めるところは締めていかないといけない。そうした危機感をお持ちのお客さまが結構多いというのが、私の感触だ」との見方を示し、「そうした中で、とくにIT部門の方々に今後どこに注力するかとお聞きしたところ、データドリブン経営やAIといったはやり言葉もさることながら、『ITのレジリエンスを向上させていきたい』との答えが思っていた以上に多かった」と述べた。
その理由については、「とくに地政学リスクや思わぬ災害などからサプライチェーンに支障が起きることの懸念が強いようだ。その懸念を払拭するために、どんなことが起きてもできるだけ迅速に復旧あるいは再構築できるようにしたいというニーズが、このところ高まっている」と説明した。
同氏は、昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きについても、次のように力説した。
「多くの企業が今、DXに取り組んでいるが、『間違ったDXの理解』が広がっているのではないかと、私は懸念している。間違ったDXの理解とは、例えばIT投資において、新規のIT導入には投資するが、既存のITには投資しないといったケースだ。その結果、既存のITに障害が起きて大きなトラブルになってしまった例が少なくない。なぜ、そうなるのか。企業のITにおいて、投資した新規というのは全体のほんの一部にしか過ぎず、投資されない既存のITが大半を占めているからだ。このバランスは明らかにおかしい」
さらに、こう続けた。
「そうしたバランスを見直そうという動きがこのところ、出てきている。その象徴的な表現が、ITのレジリエンスを向上させたいということだ。では、大きなトラブルを起こさないようにするにはどうすればよいのか。既存のITの中でもとりわけレジリエンスを向上させるべきなのが、基幹システムだ。しかし、多くの企業が基幹システムには改良の手を加えないまま、運用はシステムインテグレーターに委託して、何か起きた時のディザスタリカバリー(DR)の仕組みも構築していないというのが、今の実態ではないか。こうした状況を大いに憂いており、レジリエンス向上という大きな目的に向けて、当社としてしっかりと対応していきたい」
具体的にどうするのか。三澤氏は次のように話した。
「基幹システムのレジリエンスの向上には、次世代の仕組みが不可欠だ。次世代の仕組みとは何か。そのベースになるのがクラウドテクノロジーだ。当社はクラウドテクノロジーによって、お客さまの基幹システムのレジリエンス向上を支援していきたい」
懇親会でのスピーチの内容を本連載で取り上げることはこれまでほとんどなかったが、三澤氏の話が「オラクルらしい」と感じたので紹介した。日本企業の基幹システムのありようについて、今後も大いに「三澤節」を期待したい。