牛の町からドローンの町へ–休眠空港を試験場にして地域活性を進める米国小都市
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車で仕事に向かうJason Hill氏を見て、最先端の航空学の試験場に向かっているとは誰も思うまい。同氏の農場はオレゴン州ペンドルトンの真北に位置している。ポートランドからは東に約3時間のところだ。しかし、テクノロジー企業が集合した太平洋岸北西部の最先端の地であるポートランドの「シリコンフォレスト」からは、はるかに遠い場所にあると言えるだろう。
Hill氏の家系はペンドルトンで代々続く農家である。5代目の同氏は、風が吹きさらす冬には乾燥した小麦畑を毎日訪れる。収穫期となる8月の約20日間は、午前6時頃から仕事を開始する。1日中穀物を刈り取って輸送し、晩夏の太陽が沈み始める午後8時半頃にようやく仕事が終わる。
Hill氏は農家の生活についてこう語る。「忙しく過ごすのには十分だ」
広大な黄金色の小麦畑に囲まれ、見上げればどこまでも続く青い空。ここにいて気を取られるものはほとんどない。コンバイン収穫機や、収穫物を運び出すセミトラックの機械音を除いては。
しかし、機械音が空から聞こえることがある。
Hill氏の土地の上方では、軍事企業や秘密主義のスタートアップ企業、世界大手のテクノロジー企業などが最新のドローン技術を試験している。比較的静かな実験用配送ドローンもあれば、芝刈り機ほどうるさい大型の政府用機もある。ペンドルトンは農産物の栽培と共に、偵察監視用ドローンや自動飛行タクシー、遠隔操縦ヘリコプター、緊急物資運搬用のワンタイム自動飛行グライダー、その他の無人航空機システム(UAS)の開発をサポートしてきた。
「彼らはこの広々としたスペースが好きなのだろう」と、Hill氏はドローンを試験中のチームについて語る。「ここに来て、環境を作った彼らが、本当に面白いことをやっているのを見てきた」
Hill氏の先祖は136年前に小麦畑を経営しようとこの地に定住した。当時はちょうど、ペンドルトン市議会が、公の場で酒に酔った上での喧嘩や銃の発砲を禁止する初めての条例を可決した頃だ。
ペンドルトンは150年にわたって、西部のアイデンティティを確立してきた。広大なコロンビア川沿いに位置し、ユーマティラインディアン居留地に隣接し、現在ではウイスキー、ロデオ、高い羊毛技術で知られている。
西部でも名高いこの町のロデオ競技会「ペンドルトンラウンドアップ」には、5万人が訪れる。荒馬乗りやカウボーイが国中からこの町にやって来る。Happy Canyon Princessesが各部族を代表して伝統的な衣装を身にまとい、カウボーイは雄牛に幌車を引かせて町を行進する。
一方、民間企業のPendleton Woolen Millsは現在、米国内外に向けて高級織物を販売している。2018年には、テキーラ販売会社Jose Cuervoの親会社であるメキシコのBecle, S.A.B.がPendleton Whiskyを2億500万ドルで買収した。
ペンドルトンは、人口2万人足らずのカウボーイの町としては、すでにその規模に勝る名声を得ている。
しかし、ここ10年、ペンドルトンは新たな評判を確立しようとひそかに取り組んできた。それは、ドローン革命の中心地となることだ。