コロナ禍ではっきり変わった通信回線の使い方
今回は「コロナ禍ではっきり変わった通信回線の使い方」についてご紹介します。
関連ワード (ネットワーク等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
コロナ禍によって企業では在宅勤務の拡大からクラウド化やリモート化が進んだといわれる。それは、ベンダーがたまに発表する顧客数あるいは調査会社の市場統計などから端的に伺えるが、通信回線のトラフィックだとより実態に近い変化が見て取れる。
通信事業者の英Colt Technology Services Groupでグローバルの最高マーケティング責任者を務める水谷安孝氏は、「人がオフィスにいないにもかかわらずピークトラフィックが増加していることが分かった。曜日によってもトラフィックの変化に違いが見られ、ネットワークの使われ方が明らかに変化した」と述べる。
水谷氏が働く同社ロンドンオフィスの利用帯域の変化を見ると、コロナ禍拡大以前の2020年は平均720人がおり、ピークトラフィックは120Mbpsだった。2022年は同110人に減ったが逆にピークトラフィックは152Mbpsで26%増加した。
用途別に見て割合の変化は、ビデオ会議が3%から35%に、SaaSなどが9%から18%に増加した一方、VPN(仮想私設網線)関連は30%から12%(従来VPN経由だった業務アプリへのアクセスがSaaSなどに変更)に減り、一般的なインターネット接続も34%から19%に減少した。
2022年2月時点における曜日別のピークトラフィックは、水曜日の303Mbpsを筆頭として火~木はほぼ200Mbps以上だが、月曜は91Mbps、金曜は55Mbps、土日は10Mbps未満だった。しかし、行動制限の緩和が進んだ同年11月時点では985人に急増し、ピークトラフィックの曜日別傾向は同様だが、ピークトラフィック自体は水曜日の933Mbpsを筆頭として火~木も800Mbpsを突破。月曜は591Mbps、金曜は55Mbps、土日は100Mbps未満と1桁増えた。
あくまで同社の場合だが、コロナ禍に在宅勤務が広がってもトラフィックとクラウドアプリケーションの割合が増加し、行動制限緩和後はトラフィックそのものが急増した。他方で週明けと週末は自宅で、週の半ばオフィスで仕事をするハイブリッドな働き方になったようだ。
「顧客動向を見ると、昔はピークトラフィックに合わせて100Mbps固定の利用契約といったものだったが、コロナ禍では特にセキュリティ周辺の問い合わせが増え、現在ではネットワーク利用の変動が激しく、『今後のトラフィックの変化を予測できなくなった』と話される」(水谷氏)
同社のクラウドアクセスおよびIPアクセスの売上高は、2019~2022年に年平均21%で成長し、IPアクセスのトラフィックは同52%の伸びという。2022年9月時点での同社インターネットバックボーンのトラフィックは、クラウドサービスが46%を占め、うち21%がMicrosoft、12%がAmazon、8%がGoogleとなっている。
水谷氏によれば、こうしたネットワーク利用の変化を踏まえて、昨今では帯域変動型サービスを採用する組織も増えているとのこと。ドイツの不動産サービス企業のBNP Paribas Real Estateが平時1Gbps・ピーク時最大2Mbpsとする利用契約例がある。2022年4月に米Oracleと協業して、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」との接続におけるリアルタイムな帯域変動型利用を可能とした。
直近では、2月16~26日に開催の第73回ベルリン国際映画祭でドイツのデータセンターとシンガポールのデータセンターを接続し、10Mbps~1Gbpsの帯域変動を可能にしている。この施策でアジア太平洋地域の映画制作会社などは、ドイツへの作品データの転送を必要に応じた帯域で行えるようになった。ドイツ国内の映画際の20会場47スクリーンとの接続では最大10Gbpsにしているという。
実際のネットワーク利用動向からもコロナ禍がもたらす変化は改めて大きいといえそうだ。