理研らが国産超伝導量子コンピューターの第1号機を稼働開始

今回は「理研らが国産超伝導量子コンピューターの第1号機を稼働開始」についてご紹介します。

関連ワード (ITインフラ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 理科学研究所(理研)や富士通、NTTなどの共同研究グループは3月24日、開発を進めてきた超伝導量子コンピューターを埼玉県和光市の理化学研究所(和光地区)に整備し、理研がインターネット経由で外部から利用可能な量子計算クラウドサービスを27日に開始すると発表した。量子計算などの研究開発の推進や発展を目的とした非商用利用であれば利用申請が可能だという。

 いよいよ国産の超伝導量子コンピューターの第1号機が稼働する。今回の超伝導量子コンピューターは、64量子ビットの集積回路を採用。この成果を基に拡張性の高い集積回路技術の進化に取り組み、今後は100量子ビットや1000量子ビットの量子コンピューターの開発を目指す。

 国産第1号機は、理研 量子コンピュータ研究センター長の中村泰信氏や、産業技術総合研究所(産総研) 3D集積システムグループ長の菊地克弥氏、情報通信研究機構(NICT) 超伝導ICT研究室長の寺井弘高氏、大阪大学 量子情報・量子生命研究センター長の北川勝浩氏および副センター長の藤井啓祐氏、富士通 量子研究所長の佐藤信太郎氏、NTT コンピュータ&データサイエンス研究所 特別研究員の徳永裕己氏らで構成する共同研究グループによって開発が進められ、整備された。

 量子コンピューティングは、動作原理の違いによって、量子ゲート方式とイジングマシン方式に分類され、量子ゲート方式では、超伝導、シリコン、イオントラップといったさまざまな方式が提案されている。いずれも従来のコンピューターのような汎用処理が可能ながら、古典コンピューターでは解くことができないさまざまな課題への適用が期待されている。だが、どの方式が主流になるのかは見極めがついていない段階だ。

 今回の量子コンピューターで採用されている超伝導方式は、超伝導材料を用いた電子回路上で、「ジョセフソン接合」によるトンネル接合素子を用いて量子ビットを実現する方式となり、今後有力とされる方式の一つ。だが、量子ビットの「0と1」を表すエネルギー差のスケールが小さいため、希釈冷凍機の中で極低温(約マイナス273度)まで冷却して、熱雑音を抑えることが必要になる。

 理研では現在、量子コンピュータ研究センター 超伝導量子シミュレーション研究チームでチームリーダーを務める蔡兆申博士が率いる形で、2001年に巨視的量子コヒーレンス研究チームを発足し、量子情報科学に関する研究を開始。その後、さまざまな研究者が参画し、2021年には中村泰信博士のもと、量子コンピュータ研究センターへと発展した。

 量子コンピュータ研究センターでは、超伝導方式による量子コンピューターに加えて、光量子計算研究チーム チームリーダーの古澤明博士らが取り組む光方式、半導体量子情報デバイス研究チームのチームリーダーの樽茶清悟博士らが取り組む半導体方式の研究も進めているほか、真空中の原子を用いる方式など、物理系に基づくハードウェア研究を同時並行で進めているところだ。また、量子計算理論や量子アルゴリズム、量子アーキテクチャーなどのソフトウェア研究も進めている。

 2021年には、富士通と共同で、量子コンピュータ研究センター内に「理研RQC-富士通連携センター」を設置。理研が取り組む超伝導回路を使った量子コンピューターの先端技術と、富士通が保有するコンピューティング技術、顧客視点に基づいた量子技術の応用知見を統合して、2023年度中に産業への適用を目標とする超伝導量子コンピューターの公開に向けた研究開発を進めており、ここで得られた知見が今回の超伝導量子コンピューターにも活用されている。

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