データドリブンな意思決定–DXが定着した企業の要件(その2)

今回は「データドリブンな意思決定–DXが定着した企業の要件(その2)」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、デジタルジャーニーの歩き方等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 デジタルトランスフォーメーション(DX)が定着した企業における組織運営において、意思決定の在り方は重要な要素の1つです。日々技術が進化し、ビジネスの状況が目まぐるしく変わる時代において、迅速かつ的確な意思決定を行うためには客観的なデータの活用が不可欠です。

 前回は、DXが定着した企業の5つの要件の1つとして「デジタルを駆使した仕事と働き方」を挙げました。今回は、これに続いて「データドリブンな意思決定」について考えていきます。

 DXへの重要な取り組みの1つとして、データドリブン経営の重要性が叫ばれています。データドリブンとは、経験や勘ではなく、収集したデータを基に意思決定をする考え方や手法です。SNSの普及、電子商取引(EC)やキャッシュレス決済の浸透、モバイルやセンサー機器の低廉化、モノのインターネット(IoT)の進展などによって、人の行動やモノの稼働状況などがデジタルデータとして幅広く捕捉できるようになったことから、そうしたデータを業務やビジネスにおけるさまざまな意思決定に活用することは自然の流れであり、有効な打ち手といえます。

 また、デジタルが浸透する社会では、多様化した人材とオープンでフラットな組織が優位性を発揮します。仮説を素早く検証するアジャイルな意思決定と、ビジネスの最前線となる現場での自律的な行動が求められ、データドリブンであることが、その重要な要件となることは言うまでもありません。データドリブンへの転換とは、「経験や勘が重視される」「何を言ったかではなく、誰が言ったかで物事が決まる」という状態から「データや実験の結果が重視される」「事実や検証結果に基づいて、物事が決まる」という状態に変革することを意味します(図1)。

 AmazonやGoogleなどのデジタルネイティブ企業は、生まれながらにしてデータドリブン経営を実践しています。もはや巨大企業となった現在も、ビジョンと目標を全社で共有した上で、客観的でリアルタイムなデータに基づいて現場が自律的に意思決定しながら行動しているのです。

 企業がデータドリブンな経営と意思決定を永続的に実現していくためには、データ基盤を整え、集計や分析のためのツールを社内に展開し、誰もがそれを自在に使いこなせるように普及啓発と教育研修を行わなければなりません。

 多様化した人材とオープンでフラットな組織が優位性を発揮するデジタルの時代には、過去の実績や社内の定型化されたデータに頼った旧来型の意思決定メカニズムは通用しなくなっています。目まぐるしく変化する外部環境の状況や先行的指標を含む多様なデータによるアジャイルな意思決定と、チームや個人の自律的な行動が求められています。

 新サービスや新規ビジネスを立ち上げ、成長・成功させるためのビジネス開発手法であるリーンスタートアップでは、コストをかけずに試作品や必要最小限の商品やサービスを作り、それをいち早くリリースし、顧客の反応を見て反映するというサイクルを短期間に繰り返すことが有効とされています。すなわち、早期リリースという実験と、顧客の反応というデータを基に判断することを意味します。

 また、ウェブコンテンツビジネスやEコマースの世界では、A/Bテストと呼ばれる対照実験が頻繁に行われています。A/Bテストは、従来の施策Aと代替案となる施策Bを同時に進行させて比較検証する手法ですが、これまではリアルタイムなデータが捕捉可能なインターネット上の施策を対象としたものに限られていました。

 しかし現在は、IoTやモバイルの普及などにより物理的なデータが捕捉可能となり、ビッグデータを処理するデータベースなどの基盤技術が進展したことから、店舗や生産現場など物理的な世界でA/Bテストを行うことが可能となっています。実験によってデータを創り出し、迅速に仮説を立案、検証、修正することは、業務革新や新規事業・サービスの創出において有効な手段となるはずです(図2)。

 何か新しい取り組みをしようと企画する際には、机上で構想化したり、企画書を作成したりするだけでなく、まず実験するということを習慣化することが重要です。

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