「スライビング」な従業員の育成へ–パナソニック コネクト、23年度からジョブ型導入
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パナソニック コネクトは2月22日、同社が2023年度から全従業員に導入するジョブ型人材マネジメントについて、ラウンドテーブルを開催した。
ラウンドテーブルに登壇した執行役員 常務・最高人事責任者(CHRO) 兼 人事総務本部長、最高健康責任者の新家伸浩氏は、新卒でパナソニック(旧松下電器産業)に入社して以来、人事のキャリアを歩んできたという。新家氏は「今会社を成長させるには、われわれ人事が変わり、会社を支えていくことが重要なのではないか。『人を管理する人事』から『人を生かす人事』に変わっていきたい。従業員が健康に、幸せに、自分の意思を持って成長し続けることに、人事はコミットしていく」と意気込みを述べた。
同社はパナソニック コネクティッドソリューションズ社として社内分社していた頃から、メンバーシップ型の人材マネジメントを踏襲しつつ、時代の変化に応じて、役割等級制度や1on1ミーティングの導入、公募での異動強化、育成/研修プログラムの充実化などに取り組んできた。だが、年功序列などが特徴のメンバーシップ型では、若手優秀者の起用や専門性の高い人材の育成・確保に限界を感じていたという。
パナソニックは2022年4月、持株会社制へ移行。これを機に、現在のパナソニック コネクトが誕生し、事業会社ごとにさまざまな施策を展開できるようになった。同社は「現場から社会を動かし未来へつなぐ」というパーパスを設定し、ハードウェアベースの「コア事業」とソフトウェアベースの「成長事業」に軸を置く事業戦略を立案した。
人材戦略では「従業員が挑戦することで会社が成長し、よりやりがいのある仕事が生まれ、魅力的な報酬として還元される」という循環づくりに着手。そして、従業員一人一人が自立的・自律的に学習・成長・挑戦する状態を「thriving(スライビング)」と名付けた。「ウェルビーイングにとどまらず、スライビングな従業員が多く働く会社を目指している」と新家氏は語った。
今回発表されたジョブ型人材マネジメントは、事業戦略が決まると要員計画・ポジションの定義が行われ、「評価」「報酬」「育成」「異動・配置」という各人事施策につながる仕組みとなっている(図1)。これに当たり、人事ではなく現場に近いマネージャー(組織責任者)に多くの権限を委譲しているという。
ポジションの定義では、約1400のJD(ジョブディスクリプション:職務記述書)を全従業員に公開。これにより、キャリア機会の提供、自己学習の促進、手挙げ制による登用の加速が見込まれる。
報酬の領域では、年齢や勤続年数に関係なく業務に応じた報酬体系を構築するとともに、市場を鑑みて職種ごとの報酬にも広がりを持たせる。これまで同社は社内の公平性を重視し、職種ごとの報酬は一律だったが、その結果一部の職種や等級では競合他社と比べて報酬が少ないという課題が生じていたという。
評価では、以前から行っていた1on1ミーティングに手応えを感じていることから、マネージャーと部下の対話を重視。期初ではJDを参考に目標を設定し、期中では高頻度な1on1を実施、期末では成果を報酬に変換する流れだ。マネージャーは部下一人一人の成果を踏まえ、各自の昇給率と賞与額を決定する。
この評価制度では、マネージャーの権限が大きい分、管理職としての能力が求められる。そこで同社はこの1年間、約1400人の全マネージャーを対象に、部下一人一人の成功や成長を支援する「ピープルマネジメント」に特化した研修を一人当たり30時間以上実施してきた。加えて、マネージャーを人事面で支える数十人のHRビジネスパートナー(HRBP)にも教育を行っている。
育成では、従業員自身がキャリアを描いて学習する「ラーニングカルチャー」を醸成する。同社はスキルの定義や1on1によるキャリアアドバイスに加え、独自のラーニング機関「CONNECTers Academy」を設置し、職種別の育成体系を構築する。
同社はthrivingな従業員の育成に向けて、ジョブ型人材マネジメント導入のほか、働き方改革も加速させる(図2)。新たに設定された「働き方2.0」では、在宅勤務/リモートワーク制度などを発展させ、働く場所を問わない「Work Anywhere」、一定の条件のもと居住地を問わない「Living Anywhere」などを導入する。勤務日数を選べる「週N日勤務」、取得時期が決まっていた夏季休暇をいつでも取れるようにする「コネクトオールシーズン休暇」、副業の選択肢を広げる「フクギョー!!」なども用意している。