IIJ、データセンターの脱炭素化の取り組みと新施策を発表

今回は「IIJ、データセンターの脱炭素化の取り組みと新施策を発表」についてご紹介します。

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 インターネットイニシアティブ(IIJ)は4月24日、今夏からデータセンター顧客への実質再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力供給の開始を目指すと表明した。これに伴い4月に非化石証書の直接調達を開始したほか、電力需給マッチングプラットフォームの導入に向けた実証を進めるとしている。

 同日に記者会見した基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部 データセンター基盤技術課長の堤優介氏によると、世界的な温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みの中で、データセンター事業者では、電力会社の再エネメニューを利用した脱炭素化が進むものの、データセンター顧客への環境価値の提供手法が確立されていないという。また、4月施行の改正省エネルギー法でデータセンター利用者にエネルギー使用量の定期報告が義務化され、非化石エネルギーへの転換も求められるようになったことから、データセンター顧客での脱炭素化対応需要の高まりが予想されるという。

 こうした背景から同社は、データセンター顧客に実質再エネ由来の電力を供給するために、4月に日本卸電力取引所(JEPX)の非化石価値取引会員として加入して非化石証書を直接調達し、仲介提供もできるようにした。新たな電力供給サービスで非化石証書を活用する。

 堤氏によれば、データセンター顧客は、非化石証書にその利用が明記されることで環境価値を自社利用できるようになる。また、安価なFIT非化石証書を扱うことにしており、データセンター顧客の再エネ化対応コストを抑制できるほか、IIJ側でも調達量や割り当てを直接管理できるようになり、需要にきめ細かく対応できるという。

 ただし、将来的な非化石証書の取引価格の変動と、再エネ100%利用のイニシアチブとなる「RE100」の技術要件の改正があり、IIJは今後こうした状況を注視しつつデータセンター顧客と協議しながら、実効性あるサービスメニューの実装を検討していくとしている。

 一方の電力需給マッチングプラットフォームの導入は、現状でデータセンターの再エネ利用率の変動がコストの増減に大きく影響し、データセンターの電源も多様化して、事業者と利用者の間で高度なエネルギー管理が必要となっていることへの対応になるという。

 IIJは、当事者間で情報の共有・管理ができ、ブロックチェーン技術で改ざん耐性などを担保できる電力業界で開発が進む「電力・環境価値P2Pトラッキングシステム」に注目し、関西電力で開発中のプラットフォームの利用を検討しているという。

 2022年度に実証実験を行い、IIJの白井データセンターで使用した電力の実際のデータを用いて、データセンター利用者の希望条件に沿った電力・環境価値の割り当てが可能なことを確認したとする。2023年度は第三者認証スキームの利用などを追加実証する予定で、2024年度の商用サービス開始を目指す。

 堤氏は、マッチングプラットフォームにより、データセンター利用者同士で環境価値を取引できると説明。また同社でも、グループ企業のディーカレットDCPが進めるデジタル通貨を活用した環境価値の取引に連動する決済サービスの提供などの可能性も検討しているという。

 また、会見では基盤エンジニアリング本部 基盤サービス部長の久保功氏が同社データセンターでの温室効果ガス排出量削減の取り組みの状況も説明した。同氏によれば、2022年6月末時点の試算では、スコープ2対象排出量の98%をデータセンターの電力消費が占めており、スコープ3でも70%を占めることから、自社運用する松江データセンターと白井データセンターで、主に再エネ利用とエネルギー効率向上の2つに取り組んでいる。

 久保氏によれば、後者については、省エネ法のベンチマーク制度におけるデータセンターの目標がPUE(電力使用効率) 1.4となり、松江データセンターでは2017年度以降に年度平均PUE 1.2台を維持している。白井データセンターでは省エネ機器の採用や外気直接冷却の採用などで2020年度が1.5台、2021年度が1.4台と平均PUEを下げており、2022年度は1.3を達成する見込みだという。

 前者については、松江データセンターで2022年4月に非化石証書やグリーン電力証書などを生かした再エネ率100%を達成しており、白井データセンターも2023年度中の達成を計画する。ただ、上述した証書の取引価格の変動や技術要件の変更から、実際の再エネ利用が重要になるとして、両データセンターの敷地内に太陽光発電設備の設置を進めるが、これだけではデータセンターに必要な電力の数%しかまかなえず、自社設備以外からの再エネ調達(オフサイトPPA)が急務だとしている。

 久保氏は、今後5GやIoTなど生かすエッジコンピューティングでのデータセンター需要も高まるといい、同社ではアイスランドの国営電力会社Landsvirkjunと共同で、Landsvirkjunの水力発電所にIIJの小型データセンター設備を設置し、国をまたいで分散配置されたデータセンターを運用管理する実証実験を開始したことなども紹介した。

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