中国のライブコマースで進むAI活用–AIライバーの可能性と課題点
今回は「中国のライブコマースで進むAI活用–AIライバーの可能性と課題点」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「見てください! 人の手を介さずバーチャルキャラクターが自動で動いてライブ配信をしてくれます!」。語り手が見せる先には縦置きのPCモニターが並び、バーチャルキャラクター(AIライバー)がライブコマースで実演販売する様子がある。このように、「導入すれば楽にもうかる」と言わんばかりのソリューションが数多く登場している。
中国で人気のライブコマースがECサイト「淘宝直播」(タオバオライブ)をはじめとするサービスで導入されている。本来はテレビショッピングのように配信者が商品を説明するのだが、本物と見間違えるようなリアルなバーチャルキャラクター(AIライバー)によるライブ配信が増えている。
人件費が上昇した中国では、有能なライバー(配信動画で商品を販売する人)の平均月給は2万元(約40万円、1元=20円換算)。単純計算で年間24万元かかることになるが、ある企業のバーチャルキャラクターサービスを使えばカスタマイズ費が8000元とシステム利用料が年間8万元で済み、大幅なコスト削減になる。複数のAIライバーがライブ配信することで、1日当たり100万元以上の収益を得たというケースも報じられている。バーチャルキャラクターのカスタマイズなしで月額2500~3500元、年間利用料を6000~1万元という低価格で提供している企業もある。
このように早くも価格競争が発生しているが、各社のサービスが横並びで安ければ安いほどいいというわけではない。AIライバーのカスタマイズには外見のほか、モデルのトレーニングなども含まれる。ライブ配信の視聴者向けにAIモデルをチューニングすることで、質問などにより自然な受け答えができるようになる。
どんなに高価なAIライバーの運用サービスでも、ライバーの人件費よりは安く、運用コストの面からも有利だ。しかし、ライブ効果という観点で見ると、AIライバーと本物のライバーには大きな差がある。
例えば、AIライバーの可動範囲は限られている、本物に比べて機敏な動きができない、音声と動作があまり同期していない、音声とアクセントに違和感がある、類似の質問に同じような回答をしてしまう、変化への適応力やアドリブによる良さがない、などまだ人間に追いつけない部分がある。
そのため、以前からのプロのライバーは、ライブ空間の盛り上げやフォロワーの呼び込み、信頼感の高さといった点で今でもかけがえのない存在だ。AIライバーは人間的な思考とは異なるため、消費者とより深い感情的なつながりを持つことはできない。ディープラーニング(深層学習)などのアルゴリズムを通じて商品の特徴や特性を把握することはできるが、人間のライバーを置き換えるまでの道のりはまだまだ長く、音声・画像・感情などの複数の分野でさらなる進歩が必要だ。
とはいえ、多くのショップや企業では、人間のライバーとAIライバーを組み合わせたライブ形式を採用している。例えば、ゴールデンタイムの配信には高いコンバージョン率を狙って人間のライバーを起用し、AIライバーはその合間の時間を埋めるといった運用を行っている。AIと人間が連携し、相互に補完する関係となっているため、有能なライバーの仕事がAIに奪われるということは当面ないだろう。
ところで、AIライバーの普及には別の壁がある。「TikTok」の中国版「抖音」(ドウイン)をはじめとする多くのサービスはAIライバーの配信に寛容ではなく、ルールに従わないAIライバーのライブルームはブロックされてしまう。抖音自体はAIライバーに肯定的だが、ルールには従わなければならないというスタンスだ。
例えば、AIライバーの配信を始めるには、人物画像を事前に登録し、その背後にいる運営者の実名を登録・認証する必要がある。また、AIライバーだけの完全自動化は許可されず、人手がかからなければならないといった具合だ。
AIライバーは技術力や実用化の面でまだ初期段階にあり、ルールもまだ手探りの状態だ。一方で、既に一定の経済効果を生み出しており、技術が進めば活用の領域や効果はさらに高まるだろう。