量子技術活用の産業や事業創出の現在–Q-STARや東北大学らが懇談
今回は「量子技術活用の産業や事業創出の現在–Q-STARや東北大学らが懇談」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
一般社団法人「量子技術による新産業創出協議会」(Q-STAR)と東北大学は5月14日、「共に創ってゆく~量子技術が切り拓く未来~」と題したシンポジウムを開催した。同12~14日に仙台市で開かれた「G7仙台科学技術大臣会合」の公式サイドイベント「量子技術が切り拓く未来」が東北大学敷地内の次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」で開催されたのに合わせ、その内容を引き継ぐ形で実施された。
シンポジウムは、「グローバルで量子産業の発展加速に何が必要か」を共有し、「量子技術の社会実装によって未来がどのように変わりえるのか」を共に考える機会とし、東北大学災害科学国際研究所を会場にオンラインで配信した。
東北大学 総長の大野英男氏は、「量子技術はAIに必要な膨大なパラメーターの最適化、通信、センシング、コンピューティングなどへの応用が期待されている。4月に取りまとめられた『量子未来産業創出戦略』で、量子技術の社会実装に向け産官学が連携して取り組む方向性が示された。東北大学も2024年に本格稼働するナノテラスを中核に、リサーチコンプレックスを形成し、量子科学を柱とするデータ駆動型イノベーションによる新たな社会価値創造を進める」と、量子技術への取り組みを説明した。
東北大学は、量子アニーリングを利用した防災・減災ソリューションの高度化などに取り組んでいるほか、東北大学・半導体テクノロジー共創体により、世界トップレベルの研究者が参加し、大野氏は、量子インテグレーションのプラットフォームづくりに取り組んでいることなどを示した。
また、Q-STAR 副代表理事の遠藤信博氏(NEC 特別顧問)は、「国内で20以上の量子ビーム施設が設置され、医療、製薬、ナノ加工、分析への貢献などの取り組みがある。量子技術でリアルタイム性を追求した価値創造が可能になり、人間社会で豊かなウェルビーイングを実現する。地球規模の課題解決に向け強化すべき科学技術の一つが量子技術。これをより早く、高い価値として実現するためには国内の産官学連携はもとより、同じ価値観を持つG7諸国との信頼に基づく連携、協調が不可欠だ」と述べた。
さらに、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局長の松尾泰樹氏は、「将来は技術保有国が生き残り、日本にとって重要な技術の一つが量子だ。『第6期科学技術・イノベーション基本計画』で、量子技術の基礎研究から実証、人材育成に関する拠点を設置する方針を打ち出したが、量子技術の進歩は速く、3年前のものが古くなっている」と指摘し、政府がそこで新ビジョンを打ち出したと説明した。
さらに松尾氏は、「理化学研究所が国産量子コンピューター初号機を公開したが、今後は富岳など伝統的なコンピューターとのハイブリッド環境の整備も大切。AIの進歩にも量子コンピューターが必要になるなど量子技術への関心が高まっており、量子産業が巨大なグローバル市場になる。量子未来産業創出戦略は、量子技術の実用化、産業化に向けた方針であり、産業・学術界が一緒に実行していく」と語った。
仙台市長の郡和子氏は、「仙台はさまざまな地域課題を解決するために科学技術を活用し、東北大学を中心に学術資源の集積も進め、2024年には世界最高水準の分析機能を持つ次世代放射光施設のナノテラスが完成する」と述べ、G7仙台科学技術大臣会合開催について「仙台市の科学技術力の高さを世界にアピールする機会になった。高速・高精度な計算処理が求められる中で量子コンピューターへの期待が高まっている。企業や研究機関による技術開発が加速し、より速く、より広い実用化につながることを期待している」とした。