グーグルの新たな大規模言語モデル「PaLM 2」は何が変わったか
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Googleは米国時間5月10日、新たな言語モデルである「PaLM 2」を発表した。同社の最も強力な言語モデルである「PaLM」のメジャーアップデートだ。この技術はすでに同社の25の製品に組み込まれており、コンピューティング革命を活用しようと急ぐ同社にとって、非常に重要な位置づけにある。
Googleの人工知能(AI)関連の業務を統括するDeepMind部門のバイスプレジデントを務めるZoubin Ghahramani氏は、「PaLM 2は最先端の言語モデルであり、数学、コーディング、推論、多言語翻訳、自然言語の生成を得意としている」と述べている。
PaLM 2はすでに、Googleのチャットボットである「Bard」や、「Gmail」「Googleドキュメント」「Googleスプレッドシート」「YouTube」などを含む、25のGoogle製品で使用されており、これらは開発者向けカンファレンス「Google I/O」で披露された。これは、PaLM 2が主にGoogleのデータセンター内で使われることを意味している。ただしこのモデルは、スマートフォンで動作する規模にスケールダウンすることもできる。
AIは長年にわたって利用されており、これまでは主に、スパムのフィルタリングや、写真の画質の改善、話し言葉による命令をスマートスピーカーのアクションに変換するといった、舞台裏で使われてきた。Googleは多くのAI技術を開拓してきた企業だ。しかし今や、新章の幕開けが訪れている。PaLMのような大規模な言語モデルは人間の知識や発言を大量に取り込んでおり、生成型AIは、画像を生み出したり、自然な文章を書いたりできるようになった。
いずれは、PaLM2を超えるようなものも出てくるはずだ。Googleの最高経営責任者(CEO)であるSundar Pichai氏によると、同社はDeepMindとBrainの成果を組み合わせて生み出された「Gemini」と呼ばれる後継モデルをトレーニングしているという。Geminiはマルチモーダルなモデル(これはテキストや写真を入力できることを意味する)であり、「極めて効率が高い」ものになるように作られていると同氏は言う。
Googleは多くのAI技術の発展に大きな役割を果たしてきており、2016年以降は「AIファースト企業」を自称しているほどだが、最新のAIの能力に対して社会の関心が爆発的に高まったきっかけになったのは、OpenAIの「ChatGPT」だった。Googleは、同社のAIに関する成果は単なる実験的なサービスではなく、実用段階に達しているとGoogle I/Oで主張した。
問題は、結局はAIの危険がメリットを上回ってしまうのではないかということだ。Googleは、OpenAIをはじめとする主なAI企業と同じように、AI技術の導入を慎重に進めており、悪用を避けるための仕組みを組み込み、AI技術に細心の注意を払っているとしている。しかし、すべてのAI技術が厳重に監視されているわけではないし、取り沙汰されているAIの短期的なリスクには、デマやフェイク、不正行為、自動化されたオンライン攻撃、ネガティブな固定観念の強化、人間の雇用を奪うことなども含まれている。
現代のAIを生み出した立役者の1人であるGeoffrey Hinton氏は、5月にGoogleを離れた。Hinton氏はThe New York Timesの取材に対して、「どうすれば悪意のある者がAIを悪事に使うのを防げるかは見えてこない」と述べている。