「2028年までにHDDの新規販売は終了するだろう」–ピュア・ストレージのCEOが基調講演

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 米Pure Storageは米国時間6月14~16日、米国・ラスベガスで年次カンファレンス「Pure//Accelerate 2023」を開催している。初日の基調講演には会長 兼 最高経営責任者(CEO)のCharles Giancarlo氏が登壇し、「LEVEL UP」をキーメッセージとして講演した。あらゆる利用領域でフラッシュがHDDを置き換え可能になったと強調し、5年後にはもうHDDの市場は残っていないだろうと予想した。

 同氏は、音楽の世界ではCDがレコードを、映画の世界ではDVDがビデオテープを、それぞれ登場からおよそ5~6年で市場から駆逐したと指摘。さらに、米国では有名な事例として、レンタルビデオ大手のBlockbusterがNetflixに市場シェアを奪われ破綻したことにも触れた。これは単に市場シェアが逆転しただけではなく、Netflixはその後、かつてのBlockbusterを大幅に上回る規模に成長した。単なるメディアの世代交代だけではなく、企業の運命や人々のライフスタイルにまで広範な変革をもたらしたと語った。

 その上で、Giancarlo氏は「HDDは今どこに残っているのか」と聴衆に問い掛けた。「『iPod』にはもう入っていない。ラップトップPCにも。デスクトップPCを使っていたとしても、もうそこにHDDは入っていないのではないか」と指摘。そして、エンタープライズマスストレージなどごく限られた用途でのみHDDが存続している状況だとした上で、「今から5年以内、2028年にはもう新規のHDDが販売されることはなくなっていると確信している」と語った。

 続いて同氏は、競合のストレージベンダーも相次いでオールフラッシュに転換したことを踏まえつつ、それらと比べた場合でも、Pure Storageの製品は電力効率や設置効率、信頼性が5~10倍優れており、さらに業界でもユニークな取り組みである「Evergreen」によってアップグレード作業からユーザーを解放し、製品更新のための計画停止といった、これまで当たり前だった作業を過去のものとするなどの大きな成果を達成してきたと強調した。

 競合ベンダーの多くは企業買収を繰り返しながら製品/技術や市場シェアを獲得してきた結果、製品ラインアップが複雑化し、複数のストレージOSや運用管理インターフェースなどを併用せざるを得ない状況となっているのに対し、Pure Storageは「シンプルで一貫性のある製品ラインアップを維持している」(Giancarlo氏)とした。

 Pure Storageは、1種類のストレージOS「Purity」でスケールアップ型の「FlashArray」とスケールアウト型の「FlashBlade」という2種類のハードウェアアーキテクチャーをサポートし、AI支援型のクラウド管理コンソール「Pure1」やEvergreenプログラムなど、バリエーションをむやみに増やさず、むしろコンポーネントの共通化に注力している。

 その結果、Pure Storageは顧客に対して「この製品が将来、販売終了してしまうことを心配する必要はありません」と言える唯一のベンダーだという。実際、Evergreenプログラムに加入顧客に対しては、「10年前に購入していただいた最初の製品に対してもいまだにアップデートを提供している」といい、「サブスクリプションに加入し続けているだけで、10年前に製品を購入した顧客の手元のシステムは、先週われわれが製造・販売した最新の製品と同じように見える。これは驚くべきことだ」と説明。Evergreenは、顧客を囲い込み、継続的に買い換えを促すことで利益を上げてきた既存のビジネスモデルと全く異なるものだと強調した。

 Giancarlo氏は、他の追随を許さない独自の取り組みによって急成長を続ける同社の優位性の根本として、ストレージOSのPurityと独自のストレージメディアである「DirectFlash Module」(DFM)を挙げた。

 Purityは、直近のアップデートでブロックアクセスとファイルアクセスの統合がなされており、同社の製品共通のストレージOSとなっている。OSの共通化がもたらす運用管理のシンプルさは、大きなユーザーメリットにつながるが、HDDからフラッシュへの世代交代という文脈で見た場合、PurityがDFMなどのストレージメディアを前提として設計されている点が大きな意味を持つ。

 競合他社の製品で使われているSSDは、Giancarlo氏に言わせれば「HDDに似せたもの」だという。SSDが使われ始めたころは、システム側に備わったインターフェースなどは全てHDDを前提としたものだったため、内部的にはフラッシュメモリーを活用しつつ、外部インターフェースは全てHDDとして見えるように仕立てたデバイスがSSDになる。

 言い換えると、SSDを使い始めた時点でのコンピューターシステムやストレージ製品は、SSDのことを認識せず、以前よりも高速なHDDとして扱っていたということだ。ソフトウェアもHDDの機能や構造を前提に設計されており、フラッシュならではの機能やメリットを引き出せるようにはなっていなかった。

 例えば、フラッシュの場合は書き換え回数に制約があるため、メモリーセルの全域に渡って書き込み/書き換えを分散させて平準化するための「ウェアレベリング」という処理が行われているが、こうした処理はSSD内部に実装されている。SSDメーカーがフラッシュメモリーの特性を理解し、必要なソフトウェア処理をSSD側に実装してブラックボックス化することで、ストレージメーカー側は従来のHDDベースのストレージシステムの設計を変更することなく、ストレージメディアとしてSSDをHDDの一種として接続できるようになってるわけだ。

 Pure Storageでは、こうした状況を根本から変革した。その取り組みが始まってから10年以上を要しているとのことだが、結果として半導体メーカーから供給されるブラックボックス化したSSDの代わりにDFMを使用し、必要な処理全てをPurityに実装した。DFMについては、NVMeモジュールが先行して市場投入されており、これを活用することでSSDのような「古いHDDインターフェースの技術仕様上の制約によって折角のフラッシュメモリーの性能がフルに発揮できない」という問題を回避できるようになったが、DFMではNVMeモジュールの機能を全て網羅した上でさらに独自機能を加えて拡張した形になっているという。

 既存のストレージ製品は、オールフラッシュをうたうものであっても内部の設計はHDD時代のままであることが大半だ。一方でPure Storageは競合に先駆けてHDDを前提としない、フラッシュ世代の設計に基づく製品を提供している。単に「オールフラッシュ」というだけではこの差が分かりにくいが、同社製品を「フラッシュネイティブ」だと考えるとその意味が分かりやすくなるのではないだろうか。

 ユーザー向けのメッセージとして、Giancarlo氏はQLC(Quad Level Cell)による最大75TBの大容量DFMなどがもたらすコストダウンによって、あらゆるユースケースでHDDを使い続ける意味が失われ、さらにフラッシュへのリプレースが進行するとしている。一方で、前面に打ち出してはいないものの、同社の製品設計に関しても10年以上を費やして整備してきたPurityやDFMがひとまずの完成を見たことで、今回発表された第4世代のFlashArrayにおいて、ついにHDD世代の設計を完全に脱した製品に移行したと宣言するに至ったのではないだろうか。

 Giancarlo氏は今回、キーメッセージとして「LEVEL UP」を打ち出した。実際にエンタープライズストレージの領域でパラダイムシフトが起こっており、歴史的な転換点を迎えたと認識しても間違いではないだろう。

 同氏はさらに、持続可能な開発目標(SDGs)の観点でもフラッシュストレージに優位性があると強調し、消費電力量や設置サイズなどさまざまな指標で優れているとして、HDDからの移行が必然であることを強く印象づけた。

(取材協力:ピュア・ストレージ・ジャパン)

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