地政学リスクはサステナブルな社会課題と捉えよ
今回は「地政学リスクはサステナブルな社会課題と捉えよ」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
企業の経営リスクとして、地政学リスクが注目されている。その実態はどんなものか。どう対応すればよいのか。PwC Japanグループの最新調査から考察してみたい。
地政学リスクと言えば、かつては国家安全保障に関わる政治の世界の色合いが濃かったが、近年ではそれに加えて、経済安全保障に関わる動きが対象となってきていることから、企業でも経営リスクとして対応する必要性が高まってきている。そして、この動きにはデジタルも深く関わるようになってきている。
地政学リスクについては本連載記事でもこれまで幾度か取り上げてきたが、読者諸氏もご承知のように情勢は刻々と変化している。そんな折、PwC Japanグループ(以下、PwC)が8月24日に発表した「企業の地政学リスク対応実態調査 2023」の内容が興味深いものだったので、ここで取り上げて、企業の今後の対応について考察してみたい。
PwCによると、この調査は海外で事業を展開する年商100億円以上の企業に勤務する管理職343人を対象に、2023年8月にオンラインで実施。調査対象の企業は、製造業、サービス業など産業全般をカバーしているという。
まず、最も懸念する地政学リスクを聞いた質問では、「ロシア・中国・北朝鮮などのサイバーアタック/サイバーテロ」が37%を占め、前年に続き首位となった。「グローバルサプライチェーンの寸断」は32%で2位、「中国国内政治・経済の不安定化」(21%)は3位に浮上した。PwCでは3位について「習近平政権3期目以降もなかなか力強さが戻らない中国経済への懸念を示す結果になった」とコメントしている(図1)。
次に、企業の経営戦略にとって「地政学リスクマネジメントが重要」と答えた割合は87%と、前年比5ポイント増だった。一方、「重要ではない」の割合は前年比5ポイント減で、わずか3%にとどまった。PwCではこの結果について「地政学リスクは企業経営に強い影響を与える重要な経営課題との認識が一段と広がっていることを示唆している」との見方を示した(図2)。
次に、地政学リスクへの対応の高度化へどのような取り組みをしているか、との問いでは、8割超の企業が何らかの対応に取り組んでいることが明らかになった。具体的には、「海外拠点・子会社における情報収集・共有」(46%)、「外部アドバイザー支援の活用」(35%)、「専門人材の社内育成」(32%)、「専門人材の採用強化」(26%)などが上位に並んだ。
一方、「特に対応を行っていない」との回答も17%あった。これについてPwCは「複雑化する地政学リスクに、どう優先順位を付けて対応すればよいか苦慮する企業の悩みを映している」とコメントしている(図3)。