「生成AIの利用料金なし」を打ち出したZoom CEOの思惑

今回は「「生成AIの利用料金なし」を打ち出したZoom CEOの思惑」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、Zoom Video Communications CEO & 創業者のEric Yuan氏と、テラスカイ 取締役 専務執行役員 事業ユニット長の山田誠氏の発言を紹介する。

 米Zoom Video Communications(以下、ZVC)の日本法人ZVC JAPANは10月4日、日本向けに同社のソリューションを紹介するプライベートイベント「Zoomtopia Japan Virtual 2023」を開催。その中で、ZVCが米国時間10月3~4日にカリフォルニア州サンノゼで開催した年次カンファレンス「Zoomtopia」のオープニングキーノートにおいて、同社 最高経営責任者(CEO)& 創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏が行ったスピーチを紹介した。冒頭の発言はそのスピーチの中で、同氏が生成AIの利用料金について言及したものである。

 ZVCが提供するウェブ会議ツール「Zoom」は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な感染拡大)によって、オフィスに出向かず、在宅勤務などのリモートワークが一気に広がったことで普及拡大した。しかし、ここにきてパンデミックも落ち着いてきてオフィスへの出勤の動きが戻りつつある中で、Zoom自体の普及の勢いは弱まってきているようだ。

 そこで、同社がこのところ注力しているのが、オフィスとリモートの働き方を柔軟に組み合わせたハイブリッドワークへの対応だ。

 Yuan氏によると、「ZVCにおいても週2回オフィスに出勤する形でハイブリッドワークに取り組み、個々人がどのような仕事環境でもしっかりとコミュニケーションやコラボレーションを全体としてとれるか、そして生産性を上げていけるか、自らが実験場として試行錯誤を重ね、それらをデジタルテクノロジーでどう支援していくかについて日々検討している」とのことだ。

 さらに同氏は、「Zoomは世界で何百万人もの方々に毎日使っていただいているコミュニケーションプラットフォームなので、まずはそうしたお客さまの声をしっかりと聞く必要がある。その声からすると、生産性向上と共に低コストで利用できることも重要だ。従って、これから追求すべきハイブリッドワークにおいても、コストを抑えながら生産性を上げていけるソリューションをお届けしていかなければならない。それこそが、当社の使命だと心得ている」との決意のほどを示した。

 そこで、Yuan氏が大きな期待を寄せているのが、ジェネレーティブAI(以下、生成AI)の活用だ。同社は9月、自社開発の生成AIとして「Zoom AI Companion」を発表。今後、ウェブ会議をはじめ、同社の各種サービスに順次組み込んでいく計画だ。とはいえ、生成AIによって生産性向上は想像できるが、利用のためのコストはむしろ増加するのではないか。この点について、同氏は次のように述べた。

 「生成AIの利用料金について、他のソフトウェアベンダーは自社製品に生成AIを組み込んだ分をユーザー単位のライセンス料金に上乗せして課金しようとしている。だが、生成AIは限られた人だけでなく多くの人が使えるようにすべきだ。ユーザー単位の課金はそうした考え方にそぐわない。そこで、当社の生成AIは追加料金なしで使っていただけるようにする」(図1)

 すなわち、生成AIの利用にコストはかからないと。もちろん、ユーザーにとっては朗報だが、ベンダーの間では波紋を呼ぶだろう。この料金の話は、生成AIとは何か、その本質を突いた論議となりそうだ。

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