UiPathのトップが語る「業務の自動化が進めば人はどうなるか」
今回は「UiPathのトップが語る「業務の自動化が進めば人はどうなるか」」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、UiPath 共同創立者 兼 共同CEOのDaniel Dines氏と、日本マイクロソフト 執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏の発言を紹介する。
米UiPathの日本法人UiPathは先頃、生成AIを活用した製品戦略について記者説明会を開いた。冒頭の発言はその会見の質疑応答で、来日した米国本社の共同創立者 兼 共同CEO(最高経営責任者)のDaniel Dines(ダニエル・ディネス)氏が、「業務の自動化(オートメーション)が進めば、多くの人が自分の仕事を奪われるのではないかと脅威に感じる可能性がある。そうした懸念についてどう考えているか」と聞いた筆者の質問に答えたものである。
Dines氏は会見の冒頭で、「生成AIと自動化技術は最適な組み合わせだ。生成AIによって業務の自動化はさらに進む。将来的に人はもう単純な繰り返しの仕事(ルーチンワーク)をやらなくなるだろう。人はもっと人らしい仕事をやることになる」と話した。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではDines氏の冒頭の発言に注目したい。
会見の冒頭でのDines氏の話で筆者が気になったのは、「人はもっと人らしい仕事をやることになる」という発言だ。「人らしい仕事」というのは、同氏によると、「例えば、人同士が協調してやる仕事」で、キーワードは「コラボレーション」だと。加えて「クリエイティブ」も当てはまるだろう。
その考え方に異論はないが、誰もがコラボレーションやクリエイティブの能力を発揮できるとは限らない。人らしい仕事というのは聞こえはいいが、これまで自分がやってきた仕事が自動化していくと、人は自らの存在を否定された気になり、そうした脅威がまん延するような世の中になってしまわないか。そうした思いから、先に述べたような質問をしてみた。すると、Dines氏は次のように答えた。
「人類は新たなテクノロジーが出てくれば、それを受け入れ、適応しながら、社会および生活を築いてきた。同じことがこれからまた起きることになる。歴史を振り返ると、例えば、1900年代の繊維産業における日本とインドの賃金はほぼ同じ水準だった。だが、その後、日本は自動化を積極的に進めたことで、30年後の1930年代には日本が世界でトップの繊維の輸出国となり、社会や生活の水準も上がった」
「では、その際に、人は仕事を失ったのか。そうではなく、人は変わった。自動化で大量生産できるようになった繊維を世界に広く売る手立てを講じた結果、世界最大の輸出国になったのだ。このように、新しいテクノロジーが出てきて時代が変わっていく中で、人はそのテクノロジーに適応し、仕事のやり方を変えてきた。人は自ら変わることができるという能力を備えている。それは、私に言わせれば、人がより人らしくなるということだ」
この質問については、日本法人の代表取締役CEOである長谷川康一氏も次のように答えた。
「今、AIを活用した自動化によって人の仕事はどうなるかといった話をしているが、これからデジタルネイティブの若い世代が社会の中心になっていくにつれ、自動化されていることが当たり前になっていく。そうした大きな時代の流れの中で、人は自ら変わり、むしろ自動化を利用して新しい仕事を生み出していく。UiPathはそうした時代に向けて貢献していきたい」
あえて少しネガティブな質問をしてみたが、両氏からは丁寧なコメントが返ってきた。常日頃から自動化について突き詰めて考えているからだろう。非常に興味深い会見だった。