オリックスとneoAI、生成AIを用いた共同研究–書類における取引情報の抽出精度を向上
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オリックスとneoAIは12月5日、非構造化データを生成AIでデジタル化し、保管かつ活用するサービス「PATPOST(パットポスト)」の機能強化を発表した。オリックスが提供するPATPOSTは5月からサービスを開始しているが、同月からneoAIとの共同研究を開始し、電子帳票で95.7%、手書き帳票も91.1%の抽出精度に達したことから、同サービスに組み込む予定だとしている。
オリックス 業務執行役員 法人営業本部副部長 戦略営業担当の石長浩之氏は、「企業の経理DXとPATPOSTユーザーが保有する情報をデジタル化することで、企業の普遍的な業務の効率化に挑戦していく」と述べ、サービス展開を通じた関係企業の成長を目指す。
近年のAIは学習データから入力データを予測し、異常検知や需要予測、感情分類など多方面で活用されているのは周知の通りだが、生成AIについてneoAI 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の千葉駿介氏は「2010年代に発展した深層学習技術が背景にある。2020年代に入ると研究者の間で大規模言語モデル(LLM)に注目が集まり、データ数×AIモデルの大きさ、学習量がAI精度を向上させることを経験即的に理解した」と述べ、2018年の「ELMo」(Embeddings from Language Models)から「BERT」(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)、そして昨今の「GPT-3」に発展とした説明する。
OpenAIの「ChatGPT」についても「圧倒的な高精度のみならず、有害な回答が生成されないようなRLHF(人間のフィードバックに基づいた強化学習)方法を施して回答を生成している」(千葉氏)と評した。それでもビジネスシーンで生成AIの利用は現時点で少数派。その理由として同氏は「ChatGPTに問いかけるプロンプトエンジニアリングの工夫や、多忙な従業員を教育するのも難しい。また、汎用(はんよう)的な回答も多く、業務利用する場面は少ない」と現状を分析した。
neoAIによると、各生成AI基盤モデルを下敷きに自社が集めた業界データや知見を組み込むことで、金融業界ではマニュアルや社内規定に関する書類を生成AIに読み込ませて顧客対応に用いる事例や、他業種でも非構造化データから情報を抽出してデータ処理を短縮する事例が増えているという。
オリックスのPATPOSTはビジネス書類をクラウドにアップロードし、光学文字認識(OCR)でインボイス制度や電子帳簿保存法に対応するデータ化を実現するサービスである。オリックス 法人営業本部デジタル戦略推進室長の長澤拓馬氏は、実現までに「独自AIを開発して、取引先名や金額など各情報を抽出・検索する機能に注力してきたものの、まだ正解率は7割程度」だという。
そこで、5月に東京大学松尾研究室やneoAIに協力を仰ぎ、共同研究を開始した。その結果、電子帳簿は95.7%、手書き帳簿は91.1%まで情報抽出精度を向上させたという。
オリックスは年間8000時間の業務時間を1600時間まで削減し、経理・管理部門の業務負担を5分の1に削減できると試算した。2024年春頃から取り引き情報抽出機能をPATPOSTへ実装して、2024年夏から秋までに自動仕分け機能を実装する予定だ。PATPOSTのアカウント当たり月額980円を1年程度は維持しつつも、仕分け機能は安価なオプション料金を検討中。事業計画ベースで5年後に売り上げ40億円、顧客2万社を目指している。