第1回:改正障害者差別解消法でウェブアクセシビリティー義務化?–知っておくべきリスクと社会的意義

今回は「第1回:改正障害者差別解消法でウェブアクセシビリティー義務化?–知っておくべきリスクと社会的意義」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2024年4月に施行される「障害者差別解消法」の改正に伴い、民間企業にとってはこれまで「努力義務」だった「障害者の方への合理的配慮」が「義務」に変わる。これにより、今後企業の所有するウェブサイトでは、アクセシビリティーを整備する「義務」が発生する場合があると考えられる。

 既に欧米各国では、より厳しい基準で法令の整備が進んでおり、近年では「ウェブサイトから情報を入手できず、不利益を被った」との理由で利用者から提訴され、企業側に賠償金の支払いが命じられる例も実際に増えている。

 このようなことから、今後日本においてもウェブサイトのアクセシビリティー要求レベルは段階的に高まっていくことが予想され、日本の各企業もウェブアクセシビリティーを重要課題と捉え、組織としてより一層取り組んでいく必要がある状態と言える。

 しかし、日本では“ウェブアクセシビリティー”への認知度はまだまだ低いと言わざるを得ない。そこで本連載では2回に分けてウェブアクセシビリティーについて、実践的な対応方法などを含め解説する。

 そもそも“ウェブアクセシビリティー”とはなにか。ウェブアクセシビリティーとは、公開しているウェブサイトやアプリケーションをできるだけ多くの人にとって使いやすく理解しやすくするための概念であり、特に高齢者や視覚障がいを持った方でも情報にアクセスできるようにすることを指す。

 総務省の調査(PDF)によると、国内の視覚障がい者の方の約90%以上がインターネットを利用している ことも分かっており、障がいの有無にかかわらず、インターネット/ウェブサイトが重要な情報の入手方法になっていることがうかがい知れる。

 では、視覚障がい者の方々がウェブサイトからどのようにして情報を入手しているか皆さんはご存じだろうか。視覚障がい者の方は多くの場合、PCやスマートフォンにインストールした“音声読み上げツール”を利用して、音声情報に変換して情報を入手している。ウェブサイト内のテキスト情報などがツールで読み取れる形式になっているからこそ、必要な情報の入手や、ネットショッピングなどの実現が可能と言える。

 そのため、情報が画像化されおりツールで音声の読み上げができない場合などは、正しく情報を得られない。また、音声やキャプションのない動画コンテンツのみで情報提供されていた場合は、聴覚障がいがある方が情報を取得することができない。こういった構成でウェブサイトが構築されていた場合などが、“ウェブアクセシビリティーに対応できていない”状態ということになる。

 前述の通り、2024年4月に「障害者差別解消法」の改正が施行される。これにより、条文が以下のように改正される。

 これまでは国や地方自治体などの官公庁のみが義務の扱いだったが、今後は民間の事業者にも“合理的な配慮”が義務付けられることになる。“合理的な配慮”とは、「障害のある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられた時に、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるもの」である。

 つまり、法改正に伴い合理的な配慮が義務になるということは、2024年4月からは、企業が利用者からウェブアクセシビリティーの向上を求められれば、それに応える義務が発生することになる。

 法令の改正にも表れているように、アクセシビリティーへの関心は日本国内でも高まっており、今後より一層企業はウェブアクセシビリティーに取り組んでいく必要があると考えられる。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
アップルが英語圏のSiriに2つの新たな声を追加、「女性」の声のデフォルト設定は廃止に
パブリック / ダイバーシティ
2021-04-02 17:04
プログラミングで単元を振り返り–つくば市立研究学園小・内田教諭に聞くICT教育術
IT関連
2024-06-04 01:17
NECとSISの為替BPOサービス、全国44信用金庫1033店舗で稼働
IT関連
2022-05-24 07:39
ロシアのウクライナ侵攻に抗議する意図でオープンソースパッケージに悪質コード
IT関連
2022-03-26 14:09
ブラウザベースの契約書プラットフォームを提供するJuroが約26.4億円を調達
IT関連
2022-01-19 18:44
リモートワークに伴うセキュリティ対策に不安多数–タレス調査
IT関連
2022-07-07 14:45
アマゾンのアラバマとNYスタテンアイランド物流拠点の組合票の集計が来週から始まる
IT関連
2022-03-27 21:43
テラル、経営情報基盤に「RISE with SAP」を採用–散在した情報を一元化
IT関連
2022-04-19 17:17
丸亀製麺を運営するトリドールHD、サイト多言語化で「WOVN.io」導入
IT関連
2023-02-16 00:21
Deno、JavaScript/TypeScriptのためのデータストア「Deno KV」発表。Deno本体にSQLiteを統合、分散環境では強い一貫性も提供
Deno
2023-05-09 02:39
GitLab、「GitLab 17.1」リリース–モデルレジストリーのベータ版が利用可能に
IT関連
2024-06-23 09:28
世の中は「クラウドカオス」–ヴイエムウェア首脳がコンピューティングを語る
IT関連
2022-11-18 05:20
Publickeyが受けたDoS攻撃、これまでの経緯と対策まとめ
セキュリティ
2024-03-15 09:45
水害の範囲を5分で推測・地図化、AIがSNSの画像を分析 氾濫被害の鹿児島県で
ロボット・AI
2021-07-14 10:43