インプリム、OSSを武器にローコード開発ツール市場を開拓–認知拡大に向けた新施策とは
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ローコード/ノーコード開発ツールの需要が着実に拡大している。ユーザー企業のシステム内製化やIT人材の不足などが追い風になっている。このような中、オープンソースソフトウェア(OSS)のローコード開発ツール「Pleasanter(プリザンター)」を展開するインプリムが、ダウンロード数を現在の数十万から数百万に拡大するため、新たな施策を打ち出した。
インプリム 代表取締役社長 兼 最高技術責任者(CTO)の内田大志氏は「プリザンターの認知度を上げることがダウンロード数の増加に直結する」とし、IT企業などパートナーとの関係強化や海外市場開拓、コミュニティーの立ち上げなどを計画する。同氏は、「この分野で国産のOSS(を開発・提供するの)は当社だけであるため、その強みを生かして新規と国内外の他社製ツールからの置き換え需要を取り込む」との考えを示す。
内田氏は1998年に富士通エフサスに入社し、システムエンジニア(SE)などを19年間務めた。その中で、プロジェクト管理など日々の管理業務に多くの時間を取られることに疑問を感じていたという。「管理業務がシステム化されていない中、現場のマネージャーは毎日残業をしていた。『なんとか快適にできないか』と日々考えていた」
そこで同氏は、2014年から個人で業務管理ソフトの開発を始めた。3年間取り組んで開発したのがプリザンターで、ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」に公開し、OSSとして自由に使えるようにした。
内田氏の思いは、社内にプリザンターを広めることだったが、「オタクが開発した業務ソフト」と思われたこともあってか浸透できなかったという。プリザンターの機能がいくら優れていたとしても、信用されなければ誰も使ってくれない。「独立や起業したいとは思っていなかったが、信用を獲得するには事業化するしかない」と決断し、同氏は2017年にインプリムを2人で立ち上げた。
創業1年目は売り上げがほとんど立たなかったが、2年目に大きなチャンスが訪れる。営業支援(SFA)や顧客関係管理(CRM)などのシステムを手掛けるブルーテックと資本業務を提携したことで、資金を調達するとともにターゲットを当初の中小企業から大企業へとかじを切った。その結果、大手の製造業や官公庁などへと広がり、ダウンロード数は累計数十万になる。富士通の元役員らが顧客やパートナーを紹介してくれたという。
システムインテグレーター(SIer)もプリザンターに関心を持ってくれたと同氏は言い、「プリザンターをシステム開発の土台にし、『Excel』のVBA(Visual Basic for Applications)や『Access』を置き変えたり、海外製ツールから切り替えたりする」という。インプリムにとってもSI企業との協業は欠かせない。「利用者が増え、必要不可欠なツールになればやめられない」となり、ユーザーはバックアップやセキュリティ、ほかのシステムとの連携をどうするかといった課題が挙がる。その課題解決をSI企業らと取り組めるというわけだ。
内田氏によれば、プリザンターはクラウドとオンプレミスの両方に対応し、大規模なシステム開発にも使えるようにAPIなどを用意している。あるユーザーは自前で業務システムを開発したものの、システム停止などの課題を解決できずに困っていた。またITリテラシーの高い別のユーザーは、上流から取り組むものの、内製化に向けた社内教育に悩んでいたという。「こうした相談は営業しなくても舞い込んでくる。ダウンロードしたユーザーがたくさんいるからだ」と同氏は述べる。
もちろんニーズに応えるため、パートナーのスキルアップ支援にも力を入れている。例えば、ITインフラや「Java」などの言語、APIなどの有償/無償の教材を用意。セミナーや展示会への出展を支援したり、パートナーらのプロダクトと連携したりもする。パートナー数も74社(2024年2月末)から100社、200社と増やし、従業員も今の約20人から増強するという。
一方、インプリムの収益源は収益源はサポートサービスになる。「プリザンターは無料で利用できるものの、ユーザーは自己責任で使うことになる」。そのため、例えばシステム障害などの“保険”としての問い合わせ窓口を求めるだろう。そのサポート料金は月額1万5000円から10万円になる。契約するユーザーはダウンロード数の0.1%未満だが、「それで十分マネタイズできている」と内田氏は言う。
とはいえ、ダウンロード数の拡大は収益増になる。その施策の1つは海外市場の開拓だ。プリザンターは既に7カ国語に対応しているものの、マニュアルなどは日本語のみだった。そこで、2024年末までに英語版を用意する。同氏は、「GitHubに公開しているため、いつでもグローバル対応できる」としている。
2つ目は導入事例を現在の21件(2024年2月末)から倍増させること。資産管理や要員管理、プロジェクト管理、ワークフローなどを作れる汎用(はんよう)ツールとしての“お手本”となるユースケースは、ユーザーの獲得やダウンロード数増につながるはずだとしている。
同氏は「既存プレイヤーと同じような戦い方をしない。広告競争もしない」とし、OSSの強みを生かした顧客拡大策を練る。「Excelも『Notes』もそうだったように、データが貯まるプラットフォームにすること」
50歳になった内田氏は、必要不可欠なツールに成長させていく策を考えている。