PoCの問題は技術ではなく人や組織にある–ガートナーがエンジニアの将来を展望
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ガートナージャパンは、エンジニアの将来について展望を発表した。2030年のエンジニアの役割は、産業革命に匹敵する変化を担うクリエーターになるという。
同社 ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏は、「テクノロジーの飛躍的な進化により、エンジニアの役割が想像を絶するテクノロジー(スーパーパワー)を駆使して産業革命を起こすことに変わりつつある。例えば、この1年の生成AIの進化からも認識・理解できる。これは始まりであり、これからが本番。全ての企業はデジタルによる産業革命という、かつてない時代が到来すると捉え、スーパーパワーを駆使できるテクノロジー人材を創っていく必要がある」とコメントしている。
展望で同社は、エンジニアに求められるスキルや役割が歴史的な転換を迎えているとし、これからのエンジニアは、クリエーター的エンジニアとなってテクノロジーを駆使し、企業ビジネスそのものを革新し、新たな成長につなげるための推進力を担うとする。実際に欧米のトップ企業は、10年前からエンジニアリング企業に変わり、テクノロジー/データ駆動型のビジネスを実現しつつあると指摘する。
また、テクノロジーを試行的に導入する際に行われる「概念実証(Proof of Concept=PoC)」について、技術自体より、人や組織の能力がPoCの成否に大きな影響をもたらすことが明確になりつつあるとも指摘している。
亦賀氏は、「PoCでそれほど効果が出なかったという話がよくある。それは技術の問題というより、むしろ人や組織の技術への向き合い方、スキル、マインドセット、スタイルの問題が大きいと見ている。さらには、それを生かせるデータや環境があるかどうかが大きなポイントとなる」と解説する。
同社は、亦賀氏の挙げた点が欠けているPoCに意味がないことに気づく人が増えると予想する。これからは、技術の有用性を評価するPoCが減少し、人がその技術を日常的に経験する機会としての試行導入に視点が移行するだろうという。ITを利用する側の企業(ユーザー企業)では、PoCの企画者が必ずしも技術に詳しいというわけではなく、ベンダーに丸投げしているケースが散見され、PoCを実施したことに満足し、金と時間を無駄にしていると指摘している。
これからのユーザー企業では、技術導入の企画・推進担当者には、好奇心指数が高く、技術を自ら経験することや、技術の勘所を押さえられることが求められるとのこと。技術リテラシーを高めている企業では、技術の勘所が働いて評価目的の技術の試行導入がうまく機能する一方、技術リテラシーの低い企業では、技術を自ら利用しようとしないために、いつまでも何も導入できない状況が続くと解説する。
同社は、2027年までに日本企業の60%が、技術の試行においては技術を使えるかどうかではなく人材を使えるかが試されていると理解するようになり、「PoC」という言葉を廃止すると予想する。
さらに、日本企業で担当者にクラウドやAIなどの認定資格の取得を推奨するケースも増えているとする。他方で、上司が何も勉強しないケースが今でも多くで見られ、実際に部下へAIなどの成果を出すように要求するだけで、自分は「できるのか」「もうかるのか」といった言動を繰り返す例が散見されると指摘する。ただ、日本企業の役員が認定資格の試験を受ける動きも一部に出始めているとしている。
今後の企業は、上司や組織が学習することを奨励していくようになり、2027年までに日本企業の70%がクラウドなどのハイパースケーラー、AIといった認定資格の取得をITリーダーの必須要件にするようになるという。