マイクロソフトは「自社開発の生成AI」をビジネス向けに打ち出すか
今回は「マイクロソフトは「自社開発の生成AI」をビジネス向けに打ち出すか」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
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Microsoftが近く「自社開発の生成AI」をビジネス向けに打ち出すのではないか。今回の「一言もの申す」では、こんな筆者の見立てを述べたい。
筆者がそう見立てた背景には、最近の2つの動きがある。
1つは、Microsoftが米国時間4月23日、オフラインのスマートフォンで利用できる小型の生成AI「Phi-3」(ファイスリー)を自社開発し、順次提供開始すると発表したことだ。生成AIの用途の広がりを見据えた動きだが、同社はビジネス向けにおいてはOpenAIの生成AI「ChatGPT」をベースとしたテクノロジーを採用している。だが、今回の動きはビジネス向けにおいても自社開発の生成AIを整備することを示唆しているのではないか(図1)。
もう1つは、OpenAIが4月15日、アジアで初となる事業拠点を東京に開設したことだ。同日、都内ホテルで開かれた発表会見では、「OpenAI Japanは日本マイクロソフトと協調関係を維持する」との姿勢を示していたが、ビジネス拡大への意欲は満々だった。今後のビジネス展開では競合するケースも多々出てくるのではないか。しかもそれは日本だけではなくグローバルで起こり得る。もし、OpenAIのビジネスが拡大していけば、Microsoftとの関係に変化が出てくることは想像に難くない(写真1)。
このところのITベンダーによる生成AIの提供形態は、さまざまな用途に向けた生成AIが登場してきたこともあって、複数を取り扱うケースが増えてきている。OpenAIのテクノロジーを採用しているMicrosoftも、最近ではほかの生成AIの採用にも乗り出している。複数の生成AIを用意して顧客のさまざまなニーズに応えていくのが、これからのトレンドといえる。
だが、一方で、自社開発の生成AIを用意する動きも活発だ。Microsoftとクラウドサービス分野で競合するGoogleやAmazon、エンタープライズIT分野で競合するSAPやIBM、さらには日本でも富士通、NEC、NTTといった大手ベンダーが自社開発の生成AIを提供している。
なぜ、これらの名だたるベンダーが自社開発の生成AIを保持するのか。次のような3つの要因があると筆者は見ている。
1つ目は「独自性」だ。生成AIは幅広い用途に使われるようになる。その際、自社開発のものだと迅速に加工できるし、オンリーワンなのでオリジナリティーをアピールすることもできる。テクノロジーベンダーは独自性にこだわりを持っているので、とりわけ今後のテクノロジーの核心を担うであろう生成AIについては自社開発したいという思いが強いようだ。
2つ目は「収益性」だ。自社開発は当然ながら開発コストがかかるが、一定の品質を実現してユーザーに受け入れられるようになれば、幅広い用途に適用できるようになる。そうなってくると、外部から調達してきたものと比べると格段に収益性が上がるようになるだろう。