GitHubが考える開発へのAI活用–「2025年の崖」への対応や日本の立ち位置

今回は「GitHubが考える開発へのAI活用–「2025年の崖」への対応や日本の立ち位置」についてご紹介します。

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 GitHubの日本法人ギットハブ・ジャパンは5月14日、AI搭載プログラミング支援ツール「GitHub Copilot」および責任あるAIイノベーションに関する記者説明会を開催した。

 まず、日本・韓国エンタープライズ担当シニアディレクターを務める角田賢治氏が登壇し、国内事業の概況を紹介。「GitHub」を使用する国内開発者数が300万人を超え、対2023年成長率は31%増で、2023年に70万ユーザーを獲得したことになるという。AIプロジェクトへの貢献度は世界第3位であり、日本の開発者が生成AIプロジェクトに積極的に貢献をしていると同氏はアピールする。

 2024年3月に現職への就任が発表された角田氏は、AI技術を使った開発プラットフォームであるGitHubを日本企業に浸透させることが自身のミッションと説明。GitHubが提供する価値として、顧客の生産性や開発者の満足度の向上、企業のイノベーションの加速、セキュアな製品のリリースを挙げつつ、AI技術をベースとして利用者と伴走する形でこれらを実現するのがこれまでと違う点だとした。

 同社製品は、サイバーエージェントやLINEヤフー、ZOZO、パナソニック コネクトといったエンタープライズ企業から中小企業までに導入され、開発体験の新時代を作り出していると角田氏。各企業に変革をもたらし、その結果として日本経済の変革に貢献したいと同氏は意気込みを語る。

 続いて、GitHubの最高執行責任者(COO)であるKyle Daigle氏が登壇。前回来日した1年半前は、Copilotが登場してから1年近くたった頃だったが、同ツールにより開発者のプログラミングが55%高速になっていることを紹介したと振り返る。

 以来、Copilot機能は、アイデア出しからコーディング、レビュー、セキュリティ保護までGitHubプラットフォーム全体で導入が進んでいる。自然言語を使ってのコーディングを可能にするチャットインターフェース「GitHub Copilot」やコードが持つ脆弱(ぜいじゃく)性を検出する「GitHub Code Scanning Autofix」が登場し、直近ではCopilotネイティブの開発者環境「GitHub Copilot Workspace」が発表されている。

 Copilotを使うことで、開発者は、同じ問題に繰り返し対処しなくてもよくなり、創造性を発揮するという本来の作業に時間を費やすことができるとDaigle氏。コーディングという開発者が最も喜びを感じる部分に注力できるようにすることで、Copilotは、開発体験の礎といえる地位を確立したという。

 その一方で、コーディングを日常業務としない職種での生産性はどうか。Daigle氏は、COOとして、開発者に限らず全従業員が最高の仕事ができるようなツールを提供したいとの考えを示す。同社では現在、7つの異なるAIツールのパイロットプロジェクトが進行しており、全従業員の30%が関わっているが、最初にAI機能を導入したのは、IT部門だという。

 同部門は、四半期当たり5000件の問い合わせに対応するが、問題はその数ではなく、何度も同じ問い合わせに対処するための時間だとDaigle氏は話す。この課題に対処するため、Moveworksと提携し、これまでの方法を改善したという。問い合わせなどを「Slack」経由で「Octobot」というAI搭載ツールに送るようにしたことで、30%以上がそこで処理され、問い合わせ対応に必要となる時間がIT部門従業員1人当たり毎週3時間削減された。この時間は、より創造的な作業やAI機能を全社に導入するために使われているという。

 AI導入の目的は、人にAIが置き換わるようにすることではなく、負担となる作業をAIに任すことで創造的な時間を得られるようにすることだとDaigle氏は強調する。「コンピューターには、コンピューターが得意とする繰り返しがある作業を、人には、人が得意な創造的な作業を任せるようにするのがよい」(Daigle氏)

 AIがビジネスに対して持つ変革的な力を持っていることに疑いの余地はないが、「AI自体は目新しいものではない」(同氏)。今起こっているのは、開発者やマーケティング担当者といった全ての人がAIを活用することで本来持つ力を発揮できるようになっていることだとする。

 あるカスタマーサポート部門では、レビューを必要とする古いファイルを特定するためにCopilotを使用してスクリプトを記述した。それにより、毎月数百というファイルに対して実行していた手作業がオンデマンドでできるようになった。その結果、浮いた時間をより創造的な作業に再投資することが可能となったという。

 日本では「2025年の崖」が問題となっているが、生成AIの力を使うことで、今後退職していく開発者と新しい開発者のギャップを埋められるとDaigle氏は考える。Copilotでは、「COBOL」といったレガシーなコードベースを理解する。そのため、モダンなソフトウェアに手作業で置き換える必要があったコードの最大80%を自動で対応できるという。さらに、開発者は、Copilotが提案するコードを見ることで記述パターンやアルゴリズムを学習し、最終的にレガシーな言語を理解することもできる。

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