日本IBMらの研究グループ、脂肪肝病理画像から発がんを予測するAIモデル開発
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東京大学医学部附属病院、日本IBMなどで構成される研究グループは、脂肪肝のデジタル病理画像から肝がん発症リスクを予測するAIモデルを開発した。日本IBMが発表した。この研究成果は、脂肪肝から発症する肝がんの早期発見につながり、脂肪肝病理所見と肝がんリスク評価に新たな視点を提供すると期待される。
同モデルは、肝生検標本のデジタル病理画像を深層学習して構築された。深層学習は、58例の肝生検標本デジタル病理画像を256×256ピクセルの小さなタイルに分割した2万8000枚の画像を利用している。この病理画像は、肝生検後7年以内に肝がんを発症した46人(発がん群)と、7年以上肝がんを発症しなかった639人(非発がん群)を抽出し、さらにAIモデルの学習が施設ごとの染色法や時期に影響されないよう、肝生検を実施した施設と生検した時期をマッチングさせて生成した。
従来、肝がん発症リスクの指標として肝線維化が重要視されてきたが、近年、線維化が進んでいない脂肪肝でも肝がんを発症するケースが報告されている。同モデルは、細胞異型、核細胞質比の上昇、炎症細胞浸潤といった微細な病理所見を認識することで、線維化が進んでいない症例からの肝がん発症予測を可能にする。
研究グループは、このAIモデルについて「Grad-CAM++」(Gradient-weighted Class Activation Mapping)という技術を用いて、AIがどの部分に注目しているかを可視化した。分析の結果、AIは線維化だけでなく、細胞異型、核細胞質比の上昇、炎症細胞浸潤を肝がん発症高リスクの特徴として、大型脂肪滴の沈着を低リスクの特徴として認識していると分かった。Grad-CAM++は、「説明可能AI技術」の一つで、画像分類モデルの解釈可能性を向上させる目的で、モデルが重要視している領域を可視化する。
今回検証したAIによる所見は、いずれも発がんに関連する病理学的特徴であり、医師の目では見過ごされがちな暗黙知を明確化していた。実際、AIモデルは軽度の線維化症例から発がんした6症例のうち3症例を高リスクと正確に予測したという。