脱炭素化は分散するバリューチェーンの接続が必要–AIを展開するアスペンテック

今回は「脱炭素化は分散するバリューチェーンの接続が必要–AIを展開するアスペンテック」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 世界中で脱炭素化の取り組みが進む中、米AspenTechは、さまざまな業界や企業に分かれているバリューチェーンをつなぎ合わせることが重要だとして、AIを中心としたソフトウェアの活用を顧客らと推進しているという。製品およびサステナビリティー(持続可能性) 最高責任者を務めるRasha Hasaneen氏と、サステナビリティーソリューション事業担当ゼネラルマネージャーのVikas Dhole氏に取り組みなどを聞いた。

 AspenTechは、1981年に創業し、米国マサチューセッツ州に本拠を構える。石油、エネルギー、化学、エンジニアリング業界向けの産業用ソフトウェアを開発、提供しており、各業界のグローバル大手を中心に3000社以上の顧客を持つ。

 脱炭素化においてHasaneen氏は、「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)をキーワードに挙げる。脱炭素化につながる行動は、大きく排出削減とリサイクルになり、Hasaneen氏は、資源から製造、消費というこれまでの行動様式を土台から変えていく必要があると説く。

 さらに、こうした行動変容は業界や企業それぞれのバリューチェーンに閉じることなく、各バリューチェーンをつなぎ合わせることによって実現させ、脱炭素化時代の新たな価値を創造していくべきだと話す。

 「例えば、航空業界は石油からジェット燃料を精製して航空会社が消費するというこれまでの行動様式を変革すべく、レストランや家庭の廃油からバイオ燃料を生産して航空機で利用する取り組みを進めている。飲食と家庭品、エネルギー、運輸の各バリューチェーンがつながる新しいバリューチェーンが生まれ、循環型経済への変革を推進している」(Hasaneen氏)

 このような新しい枠組みの実現と普及において同社は、AIの活用と顧客やパートナーとの協働を推進している。Dhole氏は、「2030年時点で世界の人口が97億人に膨らみ、(多くの消費を行う)中・上流階級が40%増加する。このような将来においてサステナビリティーを確保するためには、年間4兆億ドル以上の設備投資や、2030年までに多様なエネルギー資源を確保するために3兆ドル以上のインフラ投資が必要になる。われわれは、産業用のソフトウェアとデータでこれに取り組んでいる」と述べる。

 同社のソフトウェアは、設備の設計、運用、維持にわたる最適化と生産性向上を顧客に長年提供しているとし、近年では多様なエネルギー資源の確保と、二酸化炭素(CO2)を回収して地中に貯留するCarbon dioxide Capture and Storage(CCS)、そのCO2の活用も行うCarbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CCUS)などにも拡大しているという。同社は、こうした取り組みの中心的なテクノロジーにAIを位置付けている。

 Hasaneen氏によれば、同社は1990年代からニューラルネットワークに取り組み、機械学習やディープラーニング、直近の生成AIに至るまでAIの進化をソフトウェアに組み込んできている。「あらゆる産業分野の顧客がAIを活用して生産性向上といった価値を手にしている」(Hasaneen氏)

 Dhole氏は、同社のAIの取り組みでは、エンジニアリング、資産のナレッジ、各種業界での経験を“ガードレール”(規範、原則)として確立し、その上で各顧客が運用可能な堅牢性を兼ね備えるようにして、顧客がAIを安心して活用していくための透明性と信頼性を担保していると説明する。

 「われわれが関わる業界の『第一の原則』に忠実に従い、そのもとでデータとフィードバックによってAIを拡張、最適化しながら顧客に持続的な価値を提供する。顧客がAIを活用して、顧客自身がより良いオペレーションを実現するための予測と学習、適用とその継続した取り組みを可能にできるようにしていく」(Dhole氏)

 顧客との取り組み実績では、設備稼働率の向上や保守費用の大幅な削減、分散電源の最適化、CO2の排出削減、プラスチック廃棄物の削減、金属の回収率向上など多岐にわたるという。また、サステナビリティーに向けた協業では、4月にサウジアラビアの石油大手Aramcoとの戦略的計画を開始した。

 IT業界においては、世界的な生成AIブームの到来によるデータセンターでの電力消費の増大が脱炭素化を妨げかねない課題として急浮上している。Hasaneen氏は、「現在のデータセンターの電力問題の多くは生成AIのトレーニングがもたらしている。生成AI以外のAIに必要な電力は生成AIよりもはるかに少なく、AIで生成AIのために消費する電力を最適化していくことができるし、実際にデータセンター顧客もわれわれのAIでその取り組みを開始している」と話す。

 Dhole氏も「脱炭素化を可能にするサーバー機器を実現するためにわれわれのAIを活用する製造顧客や、さまざまな再生可能エネルギーを効果的に利用すべくAIを取り入れる顧客もいる」と述べる。同社は、これまで注力してきた産業分野にとどまらないバリューチェーンの実現を通じて脱炭素化を推進している。

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