イオンとナガセが語る、生成AIで開発した新サービス–マイクロソフト顧客事例
今回は「イオンとナガセが語る、生成AIで開発した新サービス–マイクロソフト顧客事例」についてご紹介します。
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日本マイクロソフトは、企業におけるMicrosoft製生成AIサービスの活用事例に関する記者説明会「GenAI Customer Day」を開催した。同イベントは2024年3月に続き2回目となる。日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド & AI ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏がMicrosoftの生成AIサービスの最新動向を解説するとともに、イオン チーフデータオフィサー データイノベーションセンター長の中山雄大氏とナガセ 東進ハイスクール東進衛星予備校 AI教育開発部長の山野高将氏が登壇した。
約300の事業会社を擁するイオングループは、食品や健康、金融など多様な接点からデータを収集して顧客のニーズを多面的に理解し、データを基に施策を展開することで「顧客の体験価値向上」と「利益の最大化」の両立を図っている。
この方針のもと同グループは2021年3月、グループ全体のデータ能力の核として「データイノベーションセンター」(DIC)を設立。DICは(1)アナリティクスの内製化、(2)ベストプラクティスのグループ会社への展開、(3)生成AIの活用など新しい事業機会の探索――に取り組み、グループ全体でデータに基づく事業価値の創造を目指している。Microsoftの生成AIサービスを活用したソリューションの開発は、100%内製で実現したという。
イオンは、商品情報やセールスコピー、タグ、詳細な説明文などECの商品説明を自動生成している。コンテンツ生成の自動化により、従業員の作業効率が向上した。担当者によると、セールスコピーの検討時間が約60%削減されたほか、従来は商品改廃(取扱商品の検討・見直し)の登録が期限から1~2日過ぎてしまうことがあったが、導入後は期日までに完了できるようになったという。現在は自動生成された説明文に対し、担当者が目視でチェックを行うことでハルシネーションやアレルギー物質の表示漏れなどを防いでいる。
生成AIを活用することでコンテンツ全体の品質も向上し、結果としてページビュー(PV)数が増加した。概念実証(PoC)では、片方の群のみで生成AIを活用したところ、もう片方の群よりPV数が高くなったという。中山氏は「ビジネスの観点では、より価値の高い文章を作れるようになった」と手応えを見せた。
担当者は実行画面において、対象商品に関する情報を入力し、「商品名」「セールスコピー」「説明文」など生成したいコンテンツを選択。オプション項目では、「生成感度」として保守/革新的な度合いを設定でき、「関西弁で生成してください」など細かい要望も付与可能だ(図1)。
加えてイオンは、地域/業態別の景気動向を可視化する独自の指標「イオン景気インデックス」も開発(図2)。既存の景況市況ではタイムラグや消費者の生活実感との隔たりなどの観点で課題があることから、同指標ではグループ全体の売上実績データと現場を知る各店長の気付きを照らし合わせている。
同指標では、全国のイオングループの店長を対象とした景気動向アンケートを毎月実施し、リアルタイム販売時点情報管理(POS)データで根拠付け、景況変動を先んじて把握している。アンケートにおいて各店長は景気の良しあしを5段階で評価し、その理由を記載する。各店長から収集された所感を生成AIが要約することで、経営層らは景気の動向と推察される要因を一元的に把握できる。
イオンは同指標のグループ内での活用を進めており、各店長はダッシュボード上で担当地域の傾向などを把握して商品の発注業務に生かすことができる。アンケートへの記入には毎月5~10分かかり、店長の業務量増加は否めないが、それを上回る効果があると中山氏は見ている。