日立とNECに見る、生体認証によるレジ決済–狙いと普及の糸口は
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スマートフォンやPCのロック解除をはじめ、施設への入場や試験でも使われ始めている生体認証。キャッシュレス決済やセルフレジの普及に伴い、小売業界での活用も期待される。本記事では、2024年度上半期に注目された日立製作所(日立)とNECの事例を紹介する。
東武鉄道(東武)と日立は4月、「東武ストア越谷店」のセルフレジに指静脈認証による決済機能を搭載したと発表した。来店客は、指を認証装置にかざすだけで決済、ポイント付与、年齢確認を行える。
日立は、東武ストアに設置されている東芝テックのセルフレジに日立の指静脈認証装置をUSB接続し、ユーザーインターフェース(UI)などの改修を行うことで、指静脈認証による決済を実現している。同決済機能は現在、越谷店、みずほ台店、新川岸店で稼働している。
同認証による決済では、レジ画面で「生体認証をしてお買い物開始」の項目を選択後、人さし指・中指・薬指を装置にかざして認証する。認証されたら、連携するポイントを選択し、支払方法として「クレジット」を選ぶ。「生体認証のクレジット」という項目を選択後、決済に利用するクレジットカードを選び、指静脈認証を再度行うと決済が完了する。ユーザーのデータは、全てクラウド上で保存されている。
誤認証の確率は、登録した本人なのに認証されない確率が約1万分の1、他人として認証されてしまう確率が約6250万分の1だという。前者の誤認証に関しては、平日は約4000人が利用する越谷店では数日に1回は発生する計算になるが、多くの場合は再度認証を試みれば正しく読み取れるとしている。
記者も現地で指静脈認証による決済を体験したところ、認証自体は読み取られている感覚を持つ間もなく完了した。仕事帰りの来店では、仕事道具などが入っている重い荷物の中から財布やスマートフォンを取り出すのは面倒なので、手ぶらでの決済は親和性が高いと思われる。
一方、指静脈情報の登録は手間がかかる印象を抱いた。同決済機能の利用には、日立の専用サイトであらかじめ氏名や生年月日、性別などの属性情報、決済に活用するクレジットカード番号を登録する必要がある。登録後、店舗の専用カウンターで顔写真付きの身分証明書による本人確認の上、左右の指3本の静脈を登録して事前登録した個人情報と連携させる。
東武と日立は登録における心理的ハードルの高さを見越し、対象期間中に指静脈情報の登録や指静脈認証での決済を行うと、東武グループ共通ポイント「TOBU POINT」を付与するキャンペーンを開催した。両社は取材時点で、3店舗合計で数千人規模の登録を目指していると説明した。
東武が指静脈認証による決済機能を搭載した目的は、レジ待ち時間の削減や店舗スタッフ数の適正化だけではない。東武ストアが導入しているセルフレジでは従来、酒類の購入時に店舗スタッフに声をかける必要があり、「声をかけるのは面倒で、有人レジも混んでいるので酒類は別の店で買う」という機会損失が懸念されていた。特に共働き世帯が多く利用する越谷店では、仕事帰りに酒類と総菜を購入するケースが多いため、年齢確認の自動化は喫緊の課題だったという。
記者が仕事帰りに時々立ち寄るコンビニエンスストアではフルセルフレジが設置されているが、購入する商品に酒類が入っていることが多いため、結果として有人レジばかりを利用している。コロナ禍を契機にテレワークが普及し、駅直結の店舗では来店客数の低下も想定される中、顧客体験(CX)の低下やそれによる機会ロスは避けたいところだろう。