BIM教育の遅れが建設業界での変革に影響–オートデスク調査

今回は「BIM教育の遅れが建設業界での変革に影響–オートデスク調査」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 建設業界向けソフトウェアを展開するオートデスクは説明会を開催し、米国Autodeskが実施した「2024年度版 デザインと創造の業界動向調査」の結果について、「コスト」「人材」「サステナビリティー」の観点で解説した。

 2024年で2回目となる同調査は、北米・中南米、欧州、中東、アジア太平洋に拠点を置く、建築・エンジニアリング・建設・オペレーション、設計・製造、メディア・エンターテインメント各業界のビジネスリーダー、未来学者、専門家5399人を対象に実施した。

 コスト管理は、グローバルで最も重要な課題として挙げられている。建設業は、受注請負産業であること、現場ごとに損益計算が行われること、入札・契約制度があることなどから、他業種と比べても予算管理や原価管理が会社の損益を左右する重要な要素となっている。実際に多くの企業が予算管理や原価管理といった管理会計を取り入れているという。

 予算管理では、事業計画を会計数値に置き換えた予算を決定して予算と実績を比較し、予算からの逸脱を防ぐようタイムリーにフィードバックを行う。原価管理では、製品の製造に必要となる原価の算出とそれに応じた目標値の設定を行い、目標値と実績の差異原因を分析してコスト改善を行う。原価管理を行っている企業は、非建設業では62.4%なのに対し、建設業では95.9%が実施している。

 コストマネジメントは重要視されている一方、情報の連携と統一、リアルタイムの意思決定には課題が多い。最大の課題として、グローバル事業開発部 アジア太平洋地域 建設事業開発部長の高橋りえん氏は「プロセスとデータの分断化」を挙げ、「分断化による手作業や重複作業が多く発生している」と指摘した。具体的には、工事管理ソフトの乱立、「Excel」ベースでの管理方式、ほぼ手入力の基幹会計システムなどの課題がある。

 理想としては、現場で利用するデータを一箇所に集め、本社管理機能を担う統合基幹業務(ERP)システムと連携させることで、プロセスの整合と最新情報のシームレスな連携を実現し、手作業の会計処理を削減することが求められる(図1)。

 コストマネジメントの目的はコスト削減のほか、実行予算の精度向上、プロジェクト管理の自動化など多岐にわたる。高橋氏は「目的によってITツールの選択が異なるので、具体的な目標設定が重要となる」と説明した。

 人材の獲得とトレーニングについて、建設業界では回答者の60%が課題と認識しており、ビルディングインフォメーションモデリング(BIM)教育の遅れはその課題を深刻化させているという。英国やシンガポールなどでは政府が主体となってBIM教育を推進しており、米国では政府の戦略や方針を基に大学や民間企業が学術と産業の連携を推進している。加えて、カナダ、オーストラリア、フィンランドでは、業界団体の力が強く、産官学に働きかける形を採っている。

 こうしたBIM先進国と比較すると、日本ではBIM教育が個別の企業に委ねられているため、企業はBIMを導入する際、欧米よりも多くの初期投資と時間が必要となる。高橋氏は「企業ではBIMの教育を受けている学生の採用が難しく、ソリューション導入における研修コストが増加したり、実務に生かせるレベルにまで時間がかかったりする」と教育の遅れが産業にもたらす影響を述べた。

 2023年と比較して今回の調査結果では、サステナビリティーの取り組みが普及していると分かったという。サステナビリティー向上のための行動を起こしている日本企業の割合は96%で、既に実施している主な取り組みとして「リサイクル素材の使用量を増やしている企業の割合」(28%)、「製造/建設作業で発生する廃棄物の量を軽減」(27%)、「サステナブルな設計手法を適用」(26%)が挙げられた。

 1年間の建設活動におけるカーボンの割合は40%で、そのうち建物やインフラの建設や改修において排出される「エンボディドカーボン」は約3分の1、使用中に排出される「オペレーショナルカーボン」は約3分の2を占める。

 カーボンの削減に当たり、高橋氏は「設計段階の意思決定は建物のライフサイクル全体のサステナビリティーに最も大きな影響を与える」と述べた。設計の段階から着手すれば、効果的かつ効率的にカーボンを削減できるという。

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