デジタルツインの基盤固め–6つの構成要素とAI統合による強化
今回は「デジタルツインの基盤固め–6つの構成要素とAI統合による強化」についてご紹介します。
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デジタルツインはあらゆる種類の組織で使用されるようになり、技術面での変革の機が熟している。物理的な施設や物体をデジタルで表現して、結果のシミュレーションや新しいアイデアの実験ができるデジタルツインは、特に製造業界での注目度が高く、「産業用メタバース」と呼ばれることもある。
現在、デジタルツインは人工知能(AI)による強化を受け、予測インテリジェンス、使いやすさがさらに向上し、幅広い業界に可能性が開かれるものと期待されている。また、クロスリアリティー(XR)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などの新しいインターフェースによって、企業の原動力となるシステムのさらに詳細な探求が可能になりそうだ。
McKinseyの2024年のレポートによると、特に生成AIが提供するテキストベースの会話型AIをデジタルツインの取り組みで利用することで、これらのテクノロジーの組み立てと展開が数週間または数日で完了するという。
「多くの組織がデジタルツインと生成AIを別々に導入して、幅広いユースケースへの対応を図っている。この2つのテクノロジーには、それぞれ異なる価値提案と大きな可能性がある」。Alex Cosmas氏とGuilherme Cruz氏をはじめとするMcKinseyのレポートの共著者らはこのような見解を示した。
AIはデジタルツインの設計と構築のプロセスを加速する。「デジタルツインを構築するとなると、複数の機械による生産のスケジューリングや運搬経路の決定といった専門性の高いアプリケーションでは特に、長い時間と大量のリソースを要する場合がある」とMcKinseyのアナリストたちは指摘する。「この取り組みには新しいデジタルツインモデルの設計と開発が伴うことが多く、そのプロセスに6カ月かそれ以上を要し、膨大な人件費、コンピューティングコスト、サーバーコストが発生する可能性がある」
生成AIをデジタルツインに組み込むことで、短期間でのコード作成が可能になるとともに、膨大な量の情報を利用できるようになる、とAccentureのIndustry Xでプロダクションおよびオペレーションズ担当グローバルリードを務めるPascal Brosset氏は米ZDNETに語った。「これにより、デジタルツインが企業のイントラネットにある膨大な非構造化データのリポジトリーにアクセスでき、その結果得られた構造化情報を人間が自然言語で利用することができる」。逆に、AIシステムのデジタルツインを構築して、ユーザーが自らのモデルを微調整することも可能だ。
AIモデルの統合は、デジタルツインの効果を高める最新の要素だ。しかし、デジタルツインには多層型の基盤が必要であり、これはデータ送信用に接続された実際の物理オブジェクトから、データストア、エンドユーザーインターフェースまで、多岐にわたる。デジタルツイン実装の基盤には、以下の基本的な要素が含まれる。
物理資産は、デジタルで再現する環境や要素で構成される。これには、施設全体から個々の機械部品まで、さまざまなものがある。
データレイヤーでは、データが収集、保存され、デジタルツインアプリケーションへの送信用に変換される。このようなデータ基盤を「可能な限り最も関連性が高く、最も高品質なデータ」の上に構築することが重要だ、とDatabricksのAI担当バイスプレジデントであるNaveen Rao氏は米ZDNETに語った。「このデータは多数の形式をとる可能性があるため、構造化データ、非構造化データ、リアルタイムデータ、バッチデータなど、さまざまな種類のデータをデータプラットフォームでサポートすることが重要だ。理想的には、このデータを高パフォーマンスの形式でも保存して、下流でモデルの訓練と分析に効率的に使用できるようにするといいだろう」
これには「中核部分の何らかの物理システムを表すモデル」が含まれる、とRao氏。「これらのモデルは予測分析を可能にして、システムの最適化を支援し、ビジネス上の重要な意思決定に影響を及ぼす。これらのモデルを可能な限り正確に保つために、生データから展開まで、そしてモデルの進化の全段階を通じて、モデルの実験を追跡する必要がある」
重要なことだが、デジタルツイン用のテクノロジーを選択する前に、「自社のデータ全体に関する適切な哲学を確立しておかなければならない」とAVEVAのイノベーションおよびインキュベーション担当ディレクターであるSimon Bennett氏は米ZDNETに語った。
通常、デジタルツインは複雑な環境を再現するため、収集されたデータに依存している。データはリアルタイムに、すべての重要なポイントとプロセスから収集するのが望ましい。これには、「センサー、5G、コボット(協働ロボット)、AR、VR、シミュレーション、生成AIレポート分析」といった不可欠なIoTテクノロジーが含まれる、とISGのプリンシパルコンサルタントであるRyan Hamze氏は米ZDNETに語った。
Motivosityのマーケティング担当バイスプレジデントのLogan Mallory氏も同じ意見で、IoTセンサーは「デジタルツインの基盤だ」と述べた。「これらのセンサーが実際の資産からリアルタイムデータを収集して、デジタルでの正確な再現に必要な情報を提供する。例えば、製造環境では、機械のIoTセンサーが温度や振動、動作状態を監視して、デジタルツインにデータを継続的に送信する」