「生成AI×UX」の進化に企業や人はどう対応していけばよいか
今回は「「生成AI×UX」の進化に企業や人はどう対応していけばよいか」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)において最重要ポイントともいえる「ユーザーエクスペリエンス(UX)」。筆者は「感動的なユーザー体験」と捉えているが、これに生成AIを掛け合わせると、どうなるのか。UXのエキスパート集団であるビービットのメディアセミナーで興味深い話を聞くことができたので、今回はその内容をお届けしたい。
ビービットは2000年に創業し、UXに関するコンサルティングやSaaSサービスを提供するベンチャー企業だ。大手企業を中心に顧客を広げており、グローバルにも事業を展開する成長株として注目されている。そんな同社が11月27日、「生成AI×UX」をテーマにメディアセミナーを開いた。その中で興味深い話を聞くことができたので本稿で紹介したい。
まず、言葉遣いについて事前にお断りしておくと、企業の場合はUXよりも顧客向けを前面に出して「カスタマーエクスペリエンス(CX)」を話題に上げることが多いが、同社ではUXをCXも包含した概念として捉えている。すなわち、UXは全ての人との接点というわけだ。
その上で、興味深い話をしてくれたのは、同社 代表取締役の遠藤直紀氏と執行役員 チーフコミュニケーションオフィサー(CCO)の藤井保文氏だ(写真1)。
遠藤氏がまず、「当社では企業と顧客の接点を3つに分類してきた」として、図1を示した。
3つとは、デジタルによる接点で「便利、楽、お得」といった価値を提供する「テックタッチ」、人や場所による接点で「心地よさ、楽しさ、嬉しさ」を提供する「ロータッチ」、人との接点で「感動、信頼」を提供する「ハイタッチ」のことだ。この分類では、デジタルによる接点はテックタッチにとどまっているという解釈である。
だが、同氏は生成AIの出現でこうした解釈が変わるのではないかと見ている。
「これまで人との接点によるハイタッチが担ってきた感動や信頼といった体験価値は、これから生成AIでも実現できるようになると実感している。今は未だ、生成AIには人間味がないとか、信頼できないといった捉え方が多いと思うが、この技術の進化はすさまじいものがある。さらに、これまでは人にしか提供できないと思ってきた『温かみ』のような価値も生成AIで代替できるようになるのではないか。そうなれば、OMO(オンラインとオフラインの融合)やカスタマーサクセスの考え方が大きく変わる。一方で、人手不足に苦しむ日本企業にとっては力強い支援になるのではないか」(遠藤氏)
UXのエキスパートが、生成AIを用いたデジタル技術によって、これまで人が提供してきた感動や信頼をもカバーできるようになると見ているのだ。筆者もこれまでの取材を通じて、この見方には賛同する。
加えて、藤井氏が「生成AIは人が提供してきた感動や信頼、温かみといった価値を、代替するだけでなく、どんどん量産できる。つまり、あらゆるシーンへこの価値を適用していくことができる。このインパクトは相当大きいだろう」との見方を示した。量産できるから、人手不足には如何様にも対応できるようになるというわけだ。
確かに、人手不足の緩和には一時的に効果がありそうだ。しかし、その先を考えると、UXに適用された生成AIはますます進化し、結局は人がやってきた仕事をどんどん奪っていくことにならないか。生成AIに仕事を奪われる懸念から制作関係者の保護に向けてストライキに発展した米国ハリウッドの映画業界のような動きが、今後あらゆる業界で起き得るのではないか。