Ridgelinez、生成AI活用をPoCから実運用へ進めるための2つの要素
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富士通グループ発のコンサルティングファームであるRidgelinezが勉強会を開催した。生成AIを活用した企業の取り組みで、概念実証(PoC)から実運用へと進められない問題について、その要因と解決策を解説した。
Ridgelinez 執行役員パートナーの水谷広巳氏は「生成AIは生産性を上げる、コストカットに使うなどと捉えられていることが多いが、最も役立つのは企業価値向上への貢献。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)などに貢献できるようなポテンシャルも秘めている」と生成AIの役割を話す。
水谷氏は「2022年11月に登場した『ChatGPT』は、チャット形式で回答を出したり、情報を整理したり、翻訳をしたりと、かなりインパクトがあった。最近では画像生成も可能で、これはマルチモーダルと言われている方向性」と生成AIの代表格の1つとも言えるChatGPTを例に挙げ、生成AI登場の歴史や各社が手掛ける関連サービスについて解説した。
本題である「PoCから実運用へと進められない問題」については、「ツール活用は、簡単に導入できるからやりやすいが、PoCまでいっても、実際の社内展開など、次のステージにはなかなか進まない。調査によると3分の1程度しか本番には進めず、残る3分の2はPoCで終わってしまう」(水谷氏)と現状を話す。
課題として挙げられたのは(1)生成技術の選定、(2)戦略なきPoC、(3)非機能要件と既存システム連携、(4)運用コストと投資対効果(ROI)――の4つ。水谷氏は「速いスピードで新しい技術が出てくるので、キャッチアップが難しいと感じているクライアントは多い。システムに関連する部分では、本番に移行する段階になって、性能面や多様性、ユーザー増によって課題が出てくることもある。生成AIは内部データをインプットしたり、外部データを使ったりすることもあるので、セキュリティ面も問題になる。あとは運用コストと投資対効果。PoCで得られた結果から、本当に投資すべきかどうかを考えなければならない」と分析する。
これらの課題をクリアし、生成AIを実用に進めるために必要な要素として水谷氏は「戦略」と「アーキテクチャー」の2つを挙げる。
「当たり前かもしれないが、戦略がきちんとあることが大事。経営から『世の中的に生成AIがバズっているのでそれを使ってなんとかしてほしい』というようなアプローチではなく、戦略を立て、経営の視点で、会社としてどのくらい投資すべきか、そしてどういった効果を期待して取り組んでいくのかを見極める必要がある。もう1つはアーキテクチャー。ここをきちんとしていないと、全部作り直しになる可能性もある。この2つを重要視している」(水谷氏)とした。
水谷氏は、「LLMシステムアーキテクチャーにおける検討ポイント例」として図を示し、「例えばLLM(大規模言語モデル)を交換するなど、違うものを入れ替えた場合でも使えるよう、再利用可能な形にしておかなければいけない」とポイントを説明した。
勉強会では、生成AIに関する支援実績も紹介。ある企業の設計部門では、暗黙知になっているベテランスタッフのナレッジを、若手エンジニアに還元する課題にチャレンジしたという。自社内のデータを組み合わせ、若手エンジニア向けに構築したマルチエージェントを提供したところ、ベテランスタッフに依存しない作業ができるようになり、年間数千万円程度の削減効果が見込めたという。
「今までは若手のスタッフが大量な資料を調べても答えが見つからず、さらにベテランスタッフも忙しくてなかなかアドバイスができないなど、無駄な時間があったらしいが、私たちが技術支援をすることで、早いスピードで社内の環境を変えられた」(Ridgelinez 上席執行役員パートナーの伊藤清隆氏)と成果を話した。
Ridgelinezでは、9月に「生成 AI アーキテクチャー設計支援サービス」の提供も開始。水谷氏は「ツールだけ導入してもうまくいかないことがあるが、技術的な知見を融合すると、企業自体の変革を描いていける」とした。