デル社長が発した「AIビジネス拡大へのしたたかなメッセージ」とは

今回は「デル社長が発した「AIビジネス拡大へのしたたかなメッセージ」とは」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、デル・テクノロジーズ 代表取締役社長の大塚俊彦氏と、NECセキュリティ 取締役執行役員の後藤淳氏の「明言」を紹介する。

 米Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズは先頃、ユーザー企業がAIソリューションの実践や検証を行える施設として東京・大手町の本社内に「Solution Center AI Innovation Lab」(以下、AI Innovation Lab)を開設したと発表した。大塚氏の冒頭の発言はその発表会見で、AI Innovation Labの根本であるDellのAIビジネスのコンセプト「Dell AI Factory」について述べたものである。

 AI Innovation Labの開設を中心とした会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは大塚氏の冒頭の発言に注目したい。

 Dell AI Factoryは、Dellが2024年5月に推進し始めたAIビジネス構想で、図1に示すように5つの要素からなる。大塚氏が説明した順番通りに紹介していこう。

 まず、右側の「ユースケース」では、Dellは世界中のユースケースを集積しており、ユースケースごとに最適化された検証済みソリューションとカスタマイズされたサービスを提供している。

 左側の「データ」については、データの大半がオンプレミスとエッジに所在していることから、インフラベンダーであるDellの影響力が大きくなる。また、同社では「生成AIにデータを持ち込むのではなく、データの発生場所に生成AIを寄せていく」ことを基本的な考え方としている。

 中央上の「サービス」は、生成AIの計画から実装、運用まで、エンドツーエンドで支援する経験豊富なコンサルティング、プロフェッショナルサービス、マネージドサービスを指す。

 中央真ん中の「オープン・エコシステム」は、最も幅広いAIエコシステムを形成していることを表している。

 そして、中央下の「インフラストラクチャ」は、Dellとしてクライアントからサーバー、ストレージ、ネットワークまで幅広いAI搭載製品ポートフォリオを提供している「主戦場」である。

 大塚氏はこう説明した上で、冒頭のように「全ての企業に…」と述べた。

 この構想に基づいた具現化の1つが、AI Innovation Labである。同社ではこの施設を「ユーザー企業がAIやエッジ、マルチクラウド、データマネジメントにおけるイノベーションを促進するための共創と学びの場」と位置付けている(図2)。

 同社にとって、AIをテコに新規顧客をどのように獲得していくのか。大塚氏の話を聞いていて、ふとそんな疑問が頭に浮かんだので、会見の質疑応答で尋ねてみた。すると、同氏は次のように答えた。

 「AIをテコに、という意味ではまさしくDell AI Factory、そしてAI Innovation Labを原動力および差別化戦略として今後も磨き上げていくつもりだ。また、当社はインフラベンダーとして、パートナー企業との協業によってその上で実現したさまざまなソリューションをお客さまに実践的な形で活用していただけるように注力している。そうしたアプローチを今後もさらに強化していきたい」

 このコメントは、Dell AI Factoryの特徴も言い表している。つまり、Dell AI FactoryはインフラベンダーとしてAIを活用する全ての領域およびソリューションに関わっていくことを示した構想とも捉えられる。このことは同社にとって非常に重要だ。なぜならば、Dellの最大の強みは、幅広い製品・サービスにおける「顧客規模」にあるからだ。

 大塚氏の「全ての企業に…」との冒頭の発言は、その強みを踏まえた、したたかなメッセージだと筆者は感じた。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
東京オリンピックを数字で振り返る 暑さ、SNS、LGBTQ……
IT関連
2021-08-11 20:58
まったく新しい特徴を備えたLinuxデスクトップ「Universal Blue」
IT関連
2023-04-25 06:43
この後、午前3時からのアップル新デバイス発表会を「生」で観よう!
IT関連
2022-03-09 07:26
AWS、暗号化メッセージングサービスのWickrを買収
IT関連
2021-06-28 17:36
「VMware vSAN Max」発表。コンピュートと独立したvSANストレージアレイのスケールが可能に。VMware Explore 2023
VMware
2023-08-24 03:24
GitHub、移行ツール「GitHub Enterprise Importer」を一般提供
IT関連
2023-06-16 05:40
顧客のイノベーションと成長、持続的なビジネスの成功に寄与–HPE・望月社長
IT関連
2023-01-11 09:13
旭食品、需要予測型自動発注システムを導入–発注業務を約3時間半短縮
IT関連
2022-06-10 07:16
アップルがiCloud上の児童虐待画像を検出する新技術「NeuralHash」導入へ
ソフトウェア
2021-08-07 21:11
ロボットが昼食のサラダボウルを調理してくれるようになる日は近い
IT関連
2022-02-20 20:25
Dropbox、所定の監査および審査を経てISMAPに登録
IT関連
2024-05-19 09:23
セキュリティ対策に「MITRE ATT&CK」の活用を–パーソルP&Tと東洋大が連携
IT関連
2023-02-01 03:17
Acompany、秘密計算でデータとAIを保護する「AutoPrivacy AI CleanRoom」を提供
IT関連
2025-02-27 20:17
Ciscoが買収した認証サービスDuoがパスワードレスに
セキュリティ
2021-04-01 10:57